イマチニブ(グリベック)とは?効果・副作用は?
がん細胞の特定の分子だけを阻害するイマチニブ
イマチニブ(グリベック)とは、抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)であり、フィラデルフィア染色体の遺伝子産物Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬です。
スイスのノバルティスファーマ社とブライアン・ドラッカーさんによって開発されました。
がん細胞の増殖を指令するシグナル伝達経路を分子レベルで遮断
分子標的治療薬とは、新しいタイプの抗がん薬であり、がん細胞の増殖を指令するシグナル伝達経路を分子レベルで遮断します。
このイマチニブ(グリベック)のおもな標的分子はBcr-Ablチロシンキナーゼ(白血病細胞増殖の最初の伝達ポイントとなる)、KITチロシンキナーゼ(消化管間質腫瘍における)などとなっており、チロシンキナーゼを阻害し、基質のチロシンリン酸化を妨げる作用があることから「チロシンキナーゼ阻害薬」とも呼ばれています。
このイマチニブ(グリベック)以後、いくつかの新薬が開発されているのですが、治療実績があり、使用経験が豊富である標準薬としてこのイマチニブ(グリベック)は変わらず位置付けられています。
また、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害する働きを持つ類似薬としては、ダサチニブ(スプリセル)、ボスチニブ(ボシュリフ)、ニロチニブ(タシグナ)が発売されており、このイマチニブ(グリベック)の効果が不十分な場合においては、これらの薬を代用して対応することも可能です。
このイマチニブ(グリベック)はがん細胞の特定の分子だけを阻害します。
そのため、腫瘍選択制が低い従来のインターフェロンや抗がん薬と比較して、副作用が軽減されます。
しかし、肝障害や体液貯留、出血、骨髄抑制にともなう血液障害等の特異な副作用が発生することもありますので注意が必要です。
気になる副作用は?
イマニチブの副作用としては、筋肉のつっぱり、体重増加、発疹、むくみ、下痢、吐き気や嘔吐等の様々な副作用が発生しやすくなっているため、実際に副作用が発生した時に慌てないように、事前に医師から十分な説明を受けておくことが重要です。
また、副作用の症状が軽い場合においては、治療を優先させて、副作用に関してはそのままにするというケースもあります。
このような副作用の中でもっとも重要となるのが、骨髄抑制によって発生する血球の減少であり、白血球が極端に減少すると、身体の抵抗力が落ちてしまうことから感染症にかかりやすくなってしまいますので非常に注意が必要です。
また、血小板が減少すると出血が発生する場合もありますので、皮下・歯茎出血等の出血傾向、さらに発熱やのどの痛み等にも注意するようにしましょう。
特異な副作用としては、前述の通り、体液貯留が現れる場合もあり、そのなかでは胸水の発現率が高くなっていて、その症状としては、から咳、急激な体重増加、息苦しさ等が発生するようになります。
その他、イマニチブの副作用としては、間質性肺炎、腎障害や肝障害等の副作用が発生する場合もありますので注意が必要です。
さらに、これらの副作用に関して、鎮痛剤のアセトアミノフェンやグレープフルーツジュース、サプリメントのセント・ジョーンズ・ワートは相互作用を引き起こして、副作用を増強させてしまう可能性がありますので摂取を控えるようにしましょう。
イマニチブは病気を完全に完治させる薬ではないため、患者は生涯その薬を飲み続けることとなります。
しかし、イマニチブによる治療費は、その薬代だけでも年間約60万円ほどとされており、その治療費による患者の経済的負担が大きいと問題になっています。
このような経済的な問題もあり、検査で白血病細胞が見つからなくなると治ったと思い、薬の服用をやめてしまう患者もいます。
しかし、薬の服用を治療途中でやめてしまうと、再び白血病細胞が増殖して病気が再発するということもありますので、自己判断で薬の服用をやめるということは絶対にしないようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬