「血液検査」や「視触診」で早期発見しよう
「陰茎がん」は男性の陰茎から発生するがんであり、男子尿路悪性腫瘍の中では2~8%、日本国内では人口10万人あたり0.4~0.5人程度の発生頻度という、極めて稀ながんとなっています。
年齢別にみてみると、60~80歳代で高い発症率となっており、その発症のピークは65~70歳となっています。
「陰茎がん」は、地域的にみると、新生児期において包皮手術を行うという習慣のある地域では、その発生率が低くなっているということから、生殖器の不衛生、亀頭包皮炎、包茎が「陰茎がん」のリスク要因と考えられています。
また、尖圭コンジロームや梅毒等の性感染症、性的パートナーが多いこと、「陰茎がん」の男性を夫に持つ女性において子宮頸がんの発生リスクが高くなることから、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染もリスク要因として挙げられています。
その他、光化学療法PUVAを受けている乾癬患者において「陰茎がん」の発症リスクの上昇が報告されていることから、紫外線もそのリスク要因となる可能性があると考えられています。
肉眼的にHPVを疑わせる所見が確認されなければ・・・
このようにHPVも「陰茎がん」のリスク要因となっているため、男性におけるHPVの有無の検査を行いたくなりますが、症状が発現していない男性では、HPVが精液内、肛門周囲広範囲、ペニス広範囲等の広い範囲のどこにHPVが存在しているかわからないため、現状では有効な検査法は存在しないというコメントを米国食品医薬品安全局(FDA)が出しています。
したがって、今のところ、男性においては、医療機関での診察において、付け根を含むペニス全体、尿道、肛門周囲を仔細に観察し、肉眼的にHPVを疑わせる所見が確認されなければ、「現状では、表面的にはHPV感染を疑わせる所見はないが、HPVに絶対に感染していないという証明にはならない。」という診断を受けることができる程度となっているのが現状となっています。
その他の「陰茎がん」の検査としては、次のようなものがあります。
「視触診」
「視触診」では、視診にて「陰茎がん」の病変部の確認を行い、触診にて硬結や圧痛の有無、尿道への浸潤、陰茎白膜等を調べます。
また、他の性感染症(梅毒、尖圭コンジローマ等)との鑑別が困難なケースも多くなっているので、「視触診」において「陰茎がん」の疑いが強まった場合には、早めに組織検査を行い、病理学的な確定診断を先に得るようにします。
病理検査には、局部麻酔を行って「陰茎がん」の病変部の一部を切除して顕微鏡で検査する「生検」と、病変部をこすることによって剥がれた細胞を顕微鏡で調べる検査である「細胞診」があります。
「血液検査」
「血液検査」では、遠隔転移やリンパ節転移を有する進行した「陰茎がん」において、血液中のSCC抗原の値が高くなる傾向があるので、その値を調べます。
ただ、「陰茎がん」には特異的な「腫瘍マーカー」は無く、「陰茎がん」を発症していたとしても採決結果が正常範囲内であるケースが少なくないため、注意が必要です。
「超音波検査」や「MRI検査」「CT検査」も
「陰茎がん」が存在することが確定した場合、尿道、海綿体、白膜等の局所への浸潤の程度を調べるために、「超音波検査」や「MRI検査」等の画像検査を行います。
また、骨盤内や鼠径部のリンパ節転移、他の臓器等への遠隔転移の有無を調べるためには、「CT検査」を行います。
近年になって、「陰茎がん」のリンパ節転移・局在診断の診断に「PET/CT検査」が有用であるとの報告がされているため、今後の「陰茎がん」の検査法として期待されています。
「陰茎がん」は初期の段階では痛みを伴わないことが多く、自覚症状がないこともほとんどのため、何もしないまま放置されてしまって、がんが進行してから発見されるというケースも多くなっています。
また、がんが発生する場所が場所であるために、何か異常に気付いたとしても、診せることが恥ずかしいということから受診が遅れ、がんの早期発見が遅れてしまうということも少なくないようです。
したがって、自分のペニスに少しでも異変を感じるようなことがあったら、恥ずかしがらずに、すぐに専門の医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。