エリブリン(ハラヴェン)とは?効果・副作用は?

エリブリン(ハラヴェン)とは、抗がん剤の一種で、微小管阻害薬に分類されています。
エリブリン(ハラヴェン)は、エーザイ社から注射薬として販売されており、ハラヴェンはその商品名となります。
エリブリンは比較的新しい抗がん剤で、2011年に承認を受けました。
エリブリンは日本で開発され、ハリコンドンBという、海洋生物のクロイソカイメンが持つ抗がん性物質をもとに作られたことから、ハリコンドリン系と呼ばれています。
がん細胞は正常細胞の突然変異によって発生するため、正常細胞とがん細胞には大きな違いはありません。
しかし、正常細胞はある程度の大きさまで成長すると、正常細胞は細胞分裂をストップさせますが、がん細胞は成長が止まることなく永遠に細胞分裂を繰り返しますので、がん細胞は増殖速度が異常に速くなります。
この細胞増殖の速度の違いが、正常細胞とがん細胞の最大の違いであり、抗がん剤はこの細胞分裂が速い細胞を攻撃ターゲットにしています。
細胞分裂が行われる際、DNAを複製する必要があります。
この細胞分裂の時、DNAは2つに分けなければなりませんが、この役割を担う物質を微小管と呼んでいます。
DNAを2つに分けるために細胞内に存在する微小管は寄せ集まる必要があるのですが、この寄せ集まる状態のことを「重合する」といいます。
この微小管が「重合する」過程を阻害することができれば、細胞分裂が進行しなくなり、細胞分裂を阻害することができるため、細胞増殖が抑制され、細胞死へと至ります。
このようにエリブリンは、微小管が寄せ集まる過程に作用し、微小管の重合を阻害するため、微小管重合阻害薬とも呼ばれています。
エリブリンは、再発または手術不能の乳がんが適応となっています
エリブリンはアントライクリン系やタキサン系の抗がん剤治療を、既に行った患者にたいして投与されることが一般的となっており、他の薬剤との併用については安全性が未だ確立されていないため、エリブリン単剤での投与となります。
また、エリブリンの投与は2~5分程度の静脈注射を行うことで終了します。
このように投与時間が短時間であるため、エリブリンは投与時の拘束時間が少ない抗がん剤であるともいえます。
エリブリンの代表的な副作用としては、骨髄抑制があり、特に好中球の減少の症状が顕著に現れます。
そのため、エリブリンを投与した後は、感染症や発熱に十分に注意しなければなりません。また、末梢神経障害の副作用も発生しやすいとされています。
この末梢神経障害の症状は、症状が軽いものも含めると、エリブリンの投与を開始した約3割の患者に現れるいわれており、症状が重篤な場合はエリブリンの減量や休薬を検討することが必要となります。
そのため、エリブリンの投与中は、慎重な経過観察を続けるようになります。
その他のエリブリンの副作用の症状としては、脱毛の症状がエリブリンを投与した約半数の患者に発生するといわれています。
エリブリンは乳がんに適応しており、患者が女性であることから、エリブリンの投与中はウィッグ等を活用して、メンタル面のケアを欠かさないようにすることが重要です。
また、エリブリンによる治療の初期には、倦怠感、口内炎、吐き気、食欲不振等の症状が発生しやすくなっています。
さらに、エリブリンの投与中は体質によって、ショック症状が起こるということもあります。
患者の肝機能や腎機能が低下している場合においては、副作用が強く発生しやすいとされています。
そのため、エリブリンによる治療を開始する前には検査を行い、エリブリンの投与量を調節するようになります。
【まとめ】植物アルカロイド一覧
■パクリタキセル注射剤(アブラキサン)
>>様々ながんの治療に用いられている抗がん剤の1つ
■ビンブラスチン(エクザール)
>>微小管阻害薬に分類されている抗がん剤の1つ
■ビンデシン(フィルデシン)
>>細胞分裂において重要な役割を果たしている微小管の働きを阻害する抗がん剤
■ビンクリスチン(オンコビン)
>>多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫等の血液の悪性腫瘍の治療に用いられる植物アルカロイド
■ビノレルビン(ナベルビン)
>>手術不能もしくは再発してしまった乳がんに対しても用いられる植物アルカロイド
■パクリタキセル(タキソール)
>>イチイ科の植物から抽出された成分を使って作られた抗がん剤
■ドセタキセル(タキソテール)
>>パクリタキセルと名称が似ていて、作用機序も同様だが抗腫瘍効果も高い場合も。
■ノギテカン(ハイカムチン)
>>小細胞肺がんや、がん化学療法後に悪化した卵巣がんの治療に使用される抗がん剤
■ソブゾキサン(ペラゾリン)
>>成人T細胞白血病リンパ腫や悪性リンパ腫の治療に使用される抗がん剤
■エリブリン(ハラヴェン)
>>再発または手術不能の乳がんに使用される抗がん剤
■エトポシド(ベプシド、ラステッド)
>>北アメリカのメギ科の植物の根から抽出した抗がん剤
■イリノテカン(カンプト、トポテシン)
>>卵巣がん、子宮がん、乳がんや進行再発胃がん、また、肺がんや大腸がん等の幅広いがんに適用される抗がん剤