メルカプトプリン(ロイケリン)とは?効果・副作用は?
急性リンパ性白血病の寛解後に使われるメルカプトプリン(ロイケリン)
メルカプトプリン(ロイケリン)とは、代謝拮抗薬と呼ばれる抗がん剤であり、その中でもプリン拮抗薬に分類されています。
メルカプトプリンは大原薬品工業から、ロイケリンという商品名の散剤で販売されており、急性・慢性の白血病に適応となっています。
メルカプトプリンは歴史的には、白血病に対抗した初めての抗がん剤として知られていますが、現在は急性リンパ性白血病の寛解後に、その維持療法や地固め療法として使用されるケースが多くなっています。
メルカプトプリン(ロイケリン)の効果・効能は?
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返すことが知られていますが、白血球においては白血病細胞が増殖していくことで出血をしたり、免疫機能が弱くなったりという症状が発生します。
また、白血病で作られた白血球細胞は、病原菌を退治する等の正常な機能を持っておらず、さらに、赤血球等の血球成分の代わりに機能しない白血球細胞が作られることになるため、貧血等の症状も発生するようになります。
白血病を治療する際は、正常細胞と比較してがん細胞のほうが増殖速度が速いという性質を利用し、増殖速度の速い細胞に対して毒性を示す化合物を体内に投与します。
人間のDNAは生命情報が書かれている物質であり、DNAを複製しなければ細胞分裂を行うことはできないので、抗がん剤はこのDNA合成を阻害するように作用します。
このDNA合成には原料が必要であり、これらの原料はグアニンやアデニン等の物質が知られていて、これらの原料を合成するために、人間の体内にはこれらのDNA原料を合成するための酵素(IMPデヒドロゲナーゼ)が存在します。
このグアニンやアデニンの合成に関わる酵素である、IMPデヒドロゲナーゼの働きを阻害すればDNA合成をできなくなり、このような考え方によって白血病細胞の増殖を抑制する薬がメルカプトプリンです。
メルカプトプリンは6-メルカプトプリンと表現されることもあり、グアニンやアデニン等の物質と似た構造をしています。
そのため、IMPデヒドロゲナーゼのようなグアニンやアデニンの合成に関わる酵素が、間違ってメルカプトプリンを体内に取り込んでしまいます。
これにより、IMPデヒドロゲナーゼ等の酵素が正常な働きができなくなり、DNA合成ができなくなります。
メルカプトプリンの代表的な副作用としては、血小板や白血球が減少してしまう骨髄抑制があります。
特にメトトレキサート等の他の抗がん剤と併用治療を行っている場合には、この骨髄抑制の症状がより強くなる場合が多くなっています。
そのため、症状が強くなった場合には無菌室での患者の管理等の対策を講じる必要があります。
また、外来で治療を受けている場合では、この骨髄抑制の症状が重篤なものとならないように、メルカプトプリンの服用量を調節することが重要となっています。
その他、口内炎、下痢、嘔吐、吐き気等のいろいろな副作用も発生しやすくなっていますので、副作用については事前に担当の医師から十分に説明を受けるようにし、実際に症状が発生しても慌てずに対処することが大切です。
また、これらの症状が軽いものであった場合には、治療を優先するというケースも多くなっていますので注意しましょう。
さらに、メルカプトプリンの副作用として、肝機能障害の症状が発生する可能性もあります。
そのため、メルカプトプリンによる治療中には定期的に肝機能のチェックを行う必要があります。
このような肝機能も含め、メルカプトプリンによる治療中に少しでも身体の異変を感じたら、すぐに担当の医師に報告するということが重要となります。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤