直腸がんの手術費用、時間、入院期間は?
「内視鏡手術」が直腸がんの基本手術
人間の大腸は主に直腸・結腸・盲腸という器官で構成され、小腸で消化吸収した残りの内容物を便として排出する働きのある重要な器官であり、全体で約1.5~2メートルの長さがあります。
この大腸の中の直腸で発生したがんのことを「直腸がん」と呼びます。
日本人では「直腸がん」と結腸に発生する「結腸がん」の発生頻度が特に高くなっており、結腸の中ではS字結腸と呼ばれる直腸に近い部分での発生が多くなっています。
最も望ましい手術は「内視鏡手術」
「直腸がん」の治療法の基本は、他のがんと同じく、がんの切除となり、その中で最も望ましい手術は「内視鏡手術」です。
「内視鏡手術」が適用されるのは、ポリープの大きさが2cmを越えておらず、がんが粘膜下層まででとどまっている状態で、リンパ節転移を起こしていない状態となります。
がんが平坦な状態である場合は、生理食塩水で形状を盛り上がらせてから焼き切ります。
「内視鏡手術」が難しい場合には「腹腔鏡手術」が適用されます。
がんがある程度大きくなってしまっている状態で、「内視鏡手術」が難しい場合には「腹腔鏡手術」が適用されます。
開腹手術と比較すると、がん患者への負担が少ないというメリットがあるため、最近ではある程度進行したがんにおいても「腹腔鏡手術」が適用されることがあるようです。
「腹腔鏡手術」では、通常、4~5個の切り口をあけますが、最近では1~2個にする方法も試されているようです。
一つ一つの切り口の大きさは約5mm程度と小さくなっているので、術後は傷跡がほとんどわからなくなってしまいます。
「開腹手術」の場合は傷が残る?
「開腹手術」では、へその上から恥骨まで切開するのが通常であるため、傷の大きさが約25cmほどにもなってしまうので、その差は歴然です。
そういう理由もあり、「腹腔鏡手術」をすすめる病院も増えているようですが、「直腸がん」自体がとても大きい場合や重度の肥満の方、以前に手術してお腹に癒着がある方は「腹腔鏡手術」を行うことができないケースがあるので、注意が必要です。
また、「腹腔鏡手術」を実施して、予想よりも内臓脂肪が多くて視野が狭い場合や、予想よりもがんが大きい場合等では、手術中に「開腹手術」に切り替えるということもあり得ますので、手術前に担当医からよく説明を受けるようにしましょう。
「開腹手術」に切り替える例としては、女性に比べて内臓脂肪が多い、男性のほうが多い傾向にあるようです。
手術時間は約3~6時間程度であり、入院期間は約1週間~10日程度であることが多いようです。
リンパ節転移の可能性がある場合は「開腹手術」がもっとも確実
「直腸がん」にリンパ節転移の可能性がある場合には、上記の「内視鏡手術」や「腹腔鏡手術」よりも、郭清のしやすい「開腹手術」がもっとも確実とされています。
通常、「開腹手術」では、再発や転移を防ぐため、病巣より10cmほど大きく切除した上でリンパ節を郭清しますが、「直腸がん」の場合、切除できる範囲が狭いので、病巣を小さく切除するようになってしまいます。
また、直腸の周りには尿道や膀胱、生殖器等の重要な器官が多いので、手術の難易度は増し、その症状によって、肛門括約筋を温存する方法と人工肛門(ストーマ)を作る方法に分かれます。
手術時間は約3~6時間程度であり、入院期間は約2週間程度であることが多いようです。
手術費用はどのくらい?
手術費用としては、「内視鏡手術」は内視鏡検査が約12,000円程度(3割負担)であり、検査から手術に切り替わると、がんの数や症状によって費用が変わってきます。
「腹腔鏡手術」と「開腹手術」では手術費用にそれほど差は無く、数十万~100万円の間の金額になるのが一般的とされています。
ただ、手術時に切除するがんの数が増えたり、複雑な手術になればなるほど手術費用は高額になるので注意が必要です。
このように「直腸がん」の手術は高額になるケースも多いですが、「高額療養費制度」を使えば100万円かかる手術でも、月10万円以内で受けることができますので活用するようにしましょう。