シクロホスファミド(エンドキサン)とは?効果・副作用は?
投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し、薬効を示すシクロホスファミド
シクロホスファミド(エンドキサン)とは、抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)・免疫抑制剤であり、アルキル化剤に分類されています。
シクロホスファミド(エンドキサン)は塩野義製薬で製造・販売されており、エンドキサンはその商品名となっています。
シクロホスファミドはドイツのバクスター社で、初の抗がん剤ナイトロジェンマスタードの誘導体として開発されました。
その後、日本で開発されたナイトロジェンマスタード誘導体である、ナイトロミンに代わってシクロホスファミドは広く使用されるようになりました。
シクロホスファミドという薬は、そのままでは不活性であったり、明らかに活性の低い形態であるプロドラッグであるため、投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し、薬効を示すようになります。
シクロホスファミドはアルキル化剤で、水やエタノールに可溶し、DNAの合成を阻害します。
また、シクロホスファミドは抗体産生中のBリンパ球の増殖を妨げる働きがあるため、免疫抑制作用があり、臓器移植時の拒絶反応を抑える免疫抑制剤としても使用されます。
その他、血管炎症候群、全身性エリテマトーデス、多発血管炎性肉芽腫症等の膠原病の治療の際に行う、エンドキサンパルス療法等で使用する事もあります。
がん細胞は正常な細胞に変異が起きて発生するということもあり、その場合は元は正常細胞なので、正常細胞とがん細胞の違いはほとんどありません。
ただ、がん細胞は無限増殖を繰り返して増加し、正常な細胞をどんどん押しやってしまいますが、正常な細胞はがん細胞のような無秩序の増殖は行わず、傷等によって組織を修復したい時等の必要な時にしか細胞増殖は行われません。
このように、がん細胞と正常な細胞には、細胞の増殖速度が違うため、細胞の増殖速度の速い細胞だけを狙って攻撃できれば、がんに対抗できると考えられます。
がん細胞は細胞分裂を行うことで増えていきますが、この時に生命情報が刻まれているDNAを複製する必要があります。
そして、このDNA合成を阻害することができれば、細胞増殖を抑えられます。
そこで、細胞増殖をDNA合成を阻害することで抑制し、がん細胞の増殖を抑えられる薬としてシクロホスファミドが開発されました。
シクロホスファミドはアルキル化剤と呼ばれており、DNAに橋のように結合します(架橋構造)。
これにより、DNAが複製できなくなるため、がん細胞の増殖を抑えられます。
ただ、正常な細胞の中においても増殖速度の速い細胞は存在します。
これらの細胞はがん細胞と同じく細胞分裂が活発なので、これらの細胞組織では副作用が生じやすくなります。
例えば、生殖器細胞や髪の毛の細胞、骨髄細胞等がそのような増殖速度の速い細胞になり、これらの部分では副作用が発生しやすくなります。
気になる副作用は?
シクロホスファミドの副作用として多くなっているのは、吐き気や嘔吐、発疹、脱毛等ですが、症状が軽い場合は治療が優先される場合もあります。
シクロホスファミドの副作用の中でもっとも重要とされているのが骨髄抑制にともなう血液障害であり、この症状で白血球が異常に減少すると、身体の抵抗力が著しく落ちてしまうため、感染症にかかりやすくなってしまい、また、血小板減少により出血を生じやすくなることもあります。
シクロホスファミド投与後にのどの痛みや発熱、皮下出血や歯茎出血等の出血傾向の症状が発生したら、すぐに担当の医師に報告するようにしましょう。
その他のシクロホスファミドの特徴的な副作用としては、出血性膀胱炎があります。
この出血性膀胱炎の発生頻度はそれほど多くはないのですが、シクロホスファミドの使用量が多めの時は注意が必要です。
出血性膀胱炎は、薬の毒性代謝物が尿に排出される時に、膀胱粘膜を傷つけることによって発生するため、その予防としては水分を十分にとり、尿をどんどん放出することが重要となります。
このような様々な副作用の予防や、治療の効果の確認のためにも、定期的な検査はきちんと受けるようにしましょう。
【まとめ一覧】アルキル化剤の種類
■ニムスチン(ニドラン)
>>いろいろながんの治療に適応しているアルキル化剤
■ダカルバジン(ダカルバジン)
>>ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、膵ランゲルハンス島腫瘍、肉腫等の治療に適応しているアルキル化剤
■イホスファミド(イホマイド)
>>ナイトロジェンマスタード系のアルキル化剤に分類
■テモゾロミド(テモダール)
>>悪性度の高い脳腫瘍等に使用されるアルキル化剤
■プロカルバジン(塩酸プロカルバジン)
>>1973年に悪性リンパ腫の治療薬として承認されたアルキル化剤
■ラニムスチン(サイメリン)
>>田辺三菱製薬よりストレプトゾトシンを基本骨格として創薬されたアルキル化剤
■メルファラン(アルケラン)
>>骨髄腫治療薬として承認されているアルキル化剤
■シクロホスファミド(エンドキサン)
>>投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し薬効を示すアルキル化剤
■ブスルファン(ブスルフェクス、マブリン)
>>アルキル化薬に属する、かなり強力な抗がん剤