ラニムスチン(サイメリン)とは?効果・副作用は?
ニトロソウレア系のアルキル化剤の1つラニムスチン(サイメリン)
ラニムスチン(サイメリン)とは、田辺三菱製薬よりストレプトゾトシンを基本骨格として創薬されたニトロソウレア系のアルキル化剤の1つであり、サイメリンはその商品名です。
ラニムスチンは日本において、悪性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、膠芽腫、骨髄腫、本態性血小板増多症、真性赤血球増加症の治療への使用が認可されていますが、アメリカ合衆国においては、アメリカ食品医薬品局による評価中であるため、市販されていません。
ラニムスチンはアルキル化剤のなかで、水溶性ニトロソウレア系というグルコース骨格を持つ種類に分類されています。
ラニムスチンは、がん細胞のDNA、蛋白、RNAにアルキル基を結合させ、がん細胞の増殖を阻害して殺細胞作用(アポトーシス)の効果を示しますが、これは他のアルキル化剤と同様の働きとなっており、特にDNA合成について強く阻害する働きを持っていて、DNA単鎖を切断します。
効果・効能は?
ニトロソウレア系の薬剤であるラニムスチンは、分子量が小さいため、血液脳関門を通過しやすいという性質を持っています。
そのため、悪性神経膠腫等の脳腫瘍の治療に放射線療法との併用という形で、長年にわたり使用されてきました。
しかし、同じくアルキル化剤に分類されるイミダゾテトラジン誘導体のテモゾロミド(商品名テモダール)が2000年代に開発されたため、現在の悪性神経膠腫の第一選択薬はラニムスチンではなく、テモゾロミドとなっています。
神経膠腫の治療では、出来る限り手術で腫瘍を摘出し、術後に放射線療法と化学療法を行いますが、その化学療法の第一選択薬はテモゾロミドです。
そのため、ラニムスチンの投与が検討されるのは、手術によって腫瘍を取りきることができなかったり、腫瘍が大きくなってしまったり、がんが再発・進行してしまった場合となります。
最近の神経膠腫の治療では、テモゾロミドの単剤での治療の他に、テモゾロミドに分子標的薬であるペパシズマブやインターフェロンβを追加する治療法等も行われています。
ラニムスチンの適応症で、真性多血症、慢性骨髄性白血病、本態性血小板増多症という病気がありますが、これらは造血幹細胞に異常が発生して起こる骨髄増殖性腫瘍となっています。
ラニムスチンは本態性血小板増多症と真性多血症の両方の病気に使用できる薬として長年使用されてきました。
しかし、現在では内服薬のヒロドキシカルバミド(商品名ハイドレア)が、治療の中心として使用されています。
その他、ラニムスチンは悪性リンパ腫に対するレジメンがあり、非ホジキンリンパ腫やホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植の前処置として行われる大量化学療法に使用されます。
気になる副作用は?
ラニムスチンの重篤な副作用としては骨髄抑制があり、この副作用では白血球・赤血球・血小板・血色素量の減少、貧血等により、感染症にかかりやすくなったり、出血傾向の症状があらわれます。
そのため、ラニムスチンの投与後は定期的な血液検査を欠かさないようにし、副作用の発生について注意していく必要があります。
また、その他の重篤な副作用として、間質性肺炎があります。間質性肺炎は肺胞壁に炎症が起こって、ガス交換ができなくなるという肺炎で、一般の肺炎とは異なり、治療が遅れてしまうと呼吸不全の原因ともなります。
もし、ラニムスチンの投与中に間質性肺炎の可能性が疑われた場合は、ステロイド等を投与して治療を行うようになります。
他には、ラニムスチン投与時の一般的な副作用としては、嘔吐は悪心、食欲不振等の消化器症状があります。
また、肝機能を示す検査値(ALT(GPT)、AST(GOT))の上昇、全身倦怠感等の症状も比較的多く発生する副作用となっています。
さらに、ラニムスチンを長期にわたり使用した場合、骨髄異形成症候群や白血病等の二次腫瘍が発生するというケースが稀にあります。
そのため、ラニムスチンの投与中や治療終了後においても、副作用の予防のため、定期的な検査を欠かさず受けるようにしましょう。
【まとめ一覧】アルキル化剤の種類
■ニムスチン(ニドラン)
>>いろいろながんの治療に適応しているアルキル化剤
■ダカルバジン(ダカルバジン)
>>ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、膵ランゲルハンス島腫瘍、肉腫等の治療に適応しているアルキル化剤
■イホスファミド(イホマイド)
>>ナイトロジェンマスタード系のアルキル化剤に分類
■テモゾロミド(テモダール)
>>悪性度の高い脳腫瘍等に使用されるアルキル化剤
■プロカルバジン(塩酸プロカルバジン)
>>1973年に悪性リンパ腫の治療薬として承認されたアルキル化剤
■ラニムスチン(サイメリン)
>>田辺三菱製薬よりストレプトゾトシンを基本骨格として創薬されたアルキル化剤
■メルファラン(アルケラン)
>>骨髄腫治療薬として承認されているアルキル化剤
■シクロホスファミド(エンドキサン)
>>投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し薬効を示すアルキル化剤
■ブスルファン(ブスルフェクス、マブリン)
>>アルキル化薬に属する、かなり強力な抗がん剤