イホスファミド(イホマイド)とは?効果・副作用は?
イホスファミドは細胞分裂を抑制し、がん細胞の増殖を抑えます
イホスファミド(イホマイド)とは、ナイトロジェンマスタード系のアルキル化剤に分類される抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)で、イホマイドはその商品名となります。
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返しますが、正常な細胞については、怪我をした時等の必要な時にしか細胞増殖を行いませんので、抗がん剤はそのようながん細胞と正常な細胞の違いを利用して、がん細胞に対してのみ毒性を発揮します。
アルキル化剤とは?
アルキル化剤は細胞障害性の抗がん剤のなかでも代表的なものであり、細胞分裂に働きかけ、細胞増殖を阻害する作用を持っていて、そのターゲットは細胞増殖が活発な細胞となります。
アルキル化剤は、DNAに結合することによって細胞分裂を抑制します。
DNAには遺伝子として重要な多くの生命情報が詰まっていますが、DNAは二重らせんの構造をしているため、その生命情報を読み取るためには、それぞれのDNAの二重らせんの構造を解き、一本の鎖のような形状にする必要があります。
DNA鎖が複雑にさせんを巻いている状態では生命情報を読み取ることは困難ですが、一本鎖の形状にすることでDNAに記載されている生命情報を読み取ることができ、これによってDNAを複製することが可能になることから、細胞分裂が行われるようになります。
この際、アルキル化剤はそれ自身を介して二本鎖のDNAを結びつけてしまうため、それぞれのDNAの鎖がアルキル化剤によって繋がるので、DNAの二重らせんの構造を解こうとしても一本の鎖になるということはありません。
このようなアルキル化剤による反応のことを、二本鎖のDNAに対して橋をつないでいるように見えることから架橋反応と呼んでおり、この架橋反応によってイホスファミドは細胞分裂を抑制し、がん細胞の増殖を抑えます。
幅広く使用されているイホスファミド
イホスファミドは悪性リンパ腫等の血液がんから、肺がん・前立腺がん等の固形がんまで幅広く使用されている薬です。イホスファミドの臨床試験における、がん細胞が縮小したり消えたりした割合である奏効率は、小細胞肺がんにおいて約42.4%、前立腺がんにおいて約24.1%、子宮頸がんにおいて約22.2%、骨肉腫において約9.5%となっています。
ただ、イホスファミドはがんに対抗するために細胞を傷つけるため、副作用の強い薬とされています。
副作用の症状としては、まず、排尿痛や頻尿、血尿等があります。
そのような症状は、イホスファミドの投与開始から3〜5日後にその症状が発症することが多くなっていますので、イホスファミド投与時は輸液を十分に行い、尿を多く出る状態にしておくことが重要となります。
また、イホスファミドの副作用としては骨髄抑制が発生するケースも多くなっています。
骨髄抑制の症状においては、特に好中球の減少が発生することが多くなっていますので、この骨髄抑制の症状が回復するまでは、感染症や発熱に注意することが必要となります。その他、イホスファミド投与後に吐き気や嘔吐の症状が発生することがあります。
ただ、この吐き気や嘔吐の症状に関しては中程度のリスクとされているため、ステロイド等の投与で予防することが可能です。
さらに、イホスファミドの副作用で特徴的なものとして神経症状があります。
この神経症状は約10〜30%の確率で発症し、具体的には幻覚や混乱、小脳失調による運動障害等の症状が発生する場合があります。
そのため、イホスファミド投与後はこのような神経症状についても、慎重に経過観察を行う必要があります。
イホスファミド投与後に、このような神経症状と思われる症状が発生したら、すぐに担当の医師に報告するようにしましょう。
【まとめ一覧】アルキル化剤の種類
■ニムスチン(ニドラン)
>>いろいろながんの治療に適応しているアルキル化剤
■ダカルバジン(ダカルバジン)
>>ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、膵ランゲルハンス島腫瘍、肉腫等の治療に適応しているアルキル化剤
■イホスファミド(イホマイド)
>>ナイトロジェンマスタード系のアルキル化剤に分類
■テモゾロミド(テモダール)
>>悪性度の高い脳腫瘍等に使用されるアルキル化剤
■プロカルバジン(塩酸プロカルバジン)
>>1973年に悪性リンパ腫の治療薬として承認されたアルキル化剤
■ラニムスチン(サイメリン)
>>田辺三菱製薬よりストレプトゾトシンを基本骨格として創薬されたアルキル化剤
■メルファラン(アルケラン)
>>骨髄腫治療薬として承認されているアルキル化剤
■シクロホスファミド(エンドキサン)
>>投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し薬効を示すアルキル化剤
■ブスルファン(ブスルフェクス、マブリン)
>>アルキル化薬に属する、かなり強力な抗がん剤