免疫チェックポイント阻害剤とは?効果や効能は?【癌の治療法】

新たに臨床試験が試みられている先進医療として研究される免疫チェックポイント阻害剤
がんは2人に1人が罹る病気です。
体の中で出来たがん細胞は免疫によって体から排除されますが免疫が弱ることや、がん細胞によって免疫系の働きを止めることでがん細胞が増えてしまいます。
免疫の働きを再び回復させるがん治療法を免疫療法と呼びますが未だ科学的に効果が証明された標準療法は少なく、多くは新たに臨床試験が試みられている先進医療として研究されています。
免疫療法の中で最近、臨床試験で効果が確かめられ標準療法となった治療法が免疫を止めている仕組みを標的とした免疫チェックポイント阻害剤です。
免疫チェックポイント阻害剤にはPD-1阻害剤(ニボルマブ)とCTLA-4阻害剤(イピリブマブ)があり、PD-1とCTLA-4はがん細胞が免疫の働きを止める際に作用している生体分子の名前です。
免疫チェックポイント阻害剤の効果・効能
PD-1阻害剤(ニボルマブ)とCLTA-4阻害剤(イピリブマブ)で治療効果が確認されたがん疾患を下表にまとめています。
薬 | 病気(がん) | 研究開発状況 |
---|---|---|
PD-1阻害剤 | 悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫 | 医薬品として承認済み
国内診療ガイドラインに記載あり |
CTLA-4阻害剤 | 悪性黒色腫 |
免疫チェックポイント阻害剤はこんな時に使用(適用)されます
PD-1阻害薬(ニボルマブ)とCTLA-4阻害薬(イピリマブ)が使用される患者を以下の表にまとめています。
薬 | 使用される場合 |
---|---|
PD-1阻害薬 | 根治切除不能な悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、再発または遠隔転移を有する頭頚部がん |
CTLA-4阻害薬 | 根治切除不能な悪性黒色腫 |
PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬の用法・用量を下表にまとめています。
患者 | 投与方法 | 投与量、投与間隔 |
---|---|---|
PD-1阻害薬 | ||
化学療法未治療の根治治療不能悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非細胞肺がん、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、再発または遠隔転移を有する頭頚部がん | 点滴静注 | 1回3mg/kgで2週間間隔 |
化学療法既治療の根治治療不能悪性黒色腫 | 1回3mg/kgで2週間間隔あるいは1回2mg/kgで3週間間隔 | |
CTLA-4阻害薬 | ||
根治切除不能な悪性黒色腫 | 点滴静注 | 1回3mg/kgを3週間間隔で4回 |
免疫チェックポイント阻害剤の副作用
PD-1阻害薬(ニボルマブ)とCTLA-4阻害薬(イピリマブ)の副作用を下の表にまとめています。
薬 | 重大な副作用 | その他の副作用 |
---|---|---|
PD-1阻害薬 | 間質性肺疾患、重症筋無力症、心筋炎、筋炎、横紋筋融解症、大腸炎、重度の下痢、1型糖尿病、免疫性血小板減少症紫斑病、肝機能障害、肝炎、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害、副腎障害、脳炎、重度の皮膚障害、静脈血栓塞栓症、投与部位反応 | 血液・リンパ球障害、心臓障害、耳・迷路障害、内分泌障害、眼障害、胃腸障害、全身障害、免疫系障害、感染症、代謝および栄養障害、筋骨格系および結合組織障害、精神・神経系障害、腎および尿路障害、呼吸器・胸部および縦隔部障害、皮膚および皮下組織障害、血管障害、その他 |
CTLA-4阻害薬 | 大腸炎、消化管穿孔、重度の下痢、肝不全、肝機能障害、重度の皮膚障害、下垂体炎、下垂体機能低下症、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、末梢神経障害、腎障害、間質性肺疾患 |
免疫チェックポイント阻害剤の注意点
PD-1阻害薬(ニボルマブ)の使用に関する注意
間質性肺疾患患者あるいは既住歴のある患者、自己免疫疾患患者あるいは自己免疫疾患の既住歴のある患者には慎重に投与しなければなりません。
間質性肺疾患に関しては呼吸困難、喀痰、発熱等の症状に注意し胸部X線検査を受診など十分な注意が必要です。
免疫系を活性化する薬ですので免疫系の副作用症状が出てきた場合は副腎皮質ホルモンの投与等を考慮しなければなりません。
また甲状腺機能障害が現れることがありますので甲状腺機能検査を定期的に受けて異常が出た場合は投与の中止などの処置を受けてください。
CTLA-4阻害薬(イピリブマブ)の使用に関する注意
重度の肝機能障害患者や自己免疫疾患患者あるいは自己免疫疾患の既住歴のある患者には慎重に投与しなければなりません。
AST(GOT)やALT(GPT)などの肝機能異常が出てくる場合があるので定期的な肝機能検査を行わなければなりません。
また免疫系の副作用が疑われる場合には副腎皮質ホルモンの投与などの必要な処置が必要です。
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能不全があらわれることがありますので定期的な甲状腺機能検査や必要に応じて血中コルチゾール、ACTHなどの臨床検査を受けてください。
異常が認められた場合は投与延期や副腎皮質ホルモン剤の投与、ホルモン補充療法などを受けてください。
まとめ
今回の内容は医薬品の添付文書とインタビューフォーム、国立研究開発法人国立がん研究開発センターのホームページ、厚生労働省のホームページを参考にしています。
免疫チェックポイント阻害剤について下にまとめています。
- がん細胞が、がんを除去する免疫の働きを止めている仕組みを解除する治療薬が免疫チェック阻害剤でPD-1阻害薬(ニボルマブ)とCTLA-4阻害薬(イピリブマブ)があります。臨床試験において科学的に効果・効能、安全性、用法・用量が確立した医療用医薬品になります。
- 治療が困難な悪性黒色腫に効果があります。PD-1阻害薬には他に難治性の非小細胞肺がん、腎細胞がん古典的ホジキンリンパ腫、頭頚部がんに対する効果が確認されています。
- 全身性の重大な副作用に注意が必要です。自己免疫疾患患者や過去に既住歴のある患者への投与は慎重にしなければなりません。PD-1阻害薬は間質性肺疾患患者とその既住歴のある患者が、CTLA-4阻害薬では重度の肝機能障害患者への慎重投与が必要です。