ソラフェニブ(ネクサバール)とは?効果・副作用は?
腎がん・肝細胞がんの治療に用いられるソラフェニブ(ネクサバール)
ソラフェニブ(ネクサバール)とは、分子標的薬の一種で、腎がん・肝細胞がんの治療に用いられます。
ソラフェニブ(ネクサバール)は、そのトシル酸塩が製剤化されており、オニキス・ファーマシューティカルとバイエル薬品が開発し、ネクサバールは商品名となっています。
ソラフェニブは2009年9月現在、腎細胞がんに対して80ヶ国以上、肝細胞がんに対して70ヶ国以上の国々で承認されています。
ソラフェニブの効果・効能は?
ソラフェニブはがんの増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックしますが、その標的分子は血管新生と細胞増殖のそれぞれにかかわる2種類のキナーゼという、Rafキナーゼやチロシンキナーゼ等の酵素群です。
このような作用機序より、ソラフェニブはキナーゼ阻害薬と呼ばれており、機能が異なる複数のキナーゼの働きを阻害することから、マルチキナーゼ阻害薬と呼ばれることもあります。
ソラフェニブは、進行してしまって手術不可能となった腎細胞がんや肝細胞がんに対する新たな治療法として位置づけられています。
実際の肝細胞がんの臨床試験においては、偽薬であるプラセボとの比較が行われ、約44%ほど全生存期間中央値をあげるという効果が確認されました。
この結果より、ソラフェニブは肝臓がんの全身治療薬として延命効果が認められた初めての薬となりました。
その他、ソラフェニブの甲状腺がんに対する有効性をプラセボと比較する試験も行われており、この試験には手術が困難なほどまで進行した分化型甲状腺がんで放射性ヨウ素治療抵抗性の患者417人が参加しました。
その結果、病状が安定している「無憎悪生存期間」がソラフェニブを服用していた患者207人においてその中央値が329日であったのに対し、プラセボを服用していた患者210人においては175日にとどまりました。
したがって、ソラフェニブを服用していた患者のほうが、プラセボを服用していた患者と比較して「無憎悪生存期間」が明らかに延長することが確認されました。
さらに、甲状腺がんの病勢の進行や死亡のリスクが41%低下することも確認されました。
気になる副作用は?
ソラフェニブの主な副作用としては「手足症候群」等の皮膚症状があり、ソラフェニブを服用した人の約半分以上の人に発生すると言われています。
この「手足症候群」では、手のひらや足の裏に皮疹や紅斑が発生し、痛みも伴うこともありますが、塗り薬等で治療すればソラフェニブによる治療を続けることは可能です。
ただし、もし症状がひどくなってしまった場合には、ソラフェニブの投与量を減量したり、休薬する必要があります。
その次に多い副作用として、吐き気や下痢等の消化器症状や高血圧があり、また、甲状腺がんにおける低カルシウム血症が発生する場合があります。
この高血圧の症状に対しては降圧薬で対処できますが、稀に急激な血圧上昇や全身症状をともなう重篤な高血圧クリーゼが発生することがありますので、治療中はこまめに血圧測定を行う等の血圧の管理が重要となります。
次にソラフェニブには血管新生阻害作用があることから、出血しやすくなったり、傷口が治りにくくなるという症状が発生することもありますが、その多くは軽い出血ですむようです。
ただ、命に関わるような消化管出血や脳出血が発生するというケースもあるようですので、鼻血や血痰等の出血の症状が発生した場合には、速やかに医師に報告し、指示をあおぐ必要があります。
その他の副作用として、消化管穿孔や心筋梗塞、肺障害、肝障害、肝性脳症、膵炎等の副作用が発生したという報告があります。
肺障害では、咳、発熱、息切れといった症状があらわれますので、このような初期症状が発生したら、すぐに担当の医師に報告するようにしましょう。
また、このような副作用の予防の為に、治療中の定期検査をきちんと受けるということも大切です。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬