アムルビシン(カルセド)とは?効果・副作用は?
アムルビシン(カルセド)とは、アントラサイクリン系の抗がん剤の一種です。
アムルビシン(カルセド)は、抗がん性抗生物質に分類されていて、大日本住友製薬から注射薬として販売されており、カルセドはその商品名となっています。
アムルビシンの治療の適応となっているがんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がんが主となっていて、がん細胞のDNAの塩基間に入り込み、酵素トポイソメラーゼⅡの働きを抑制します。
これによって、DNAの正常なコピーを阻害し、がん細胞の増殖を抑え、抗がん作用を示します。
アムルビシンは、このように世界初の完全合成による抗生物質
アムルビシンは、アントラサイクリン系の抗がん剤として世界で初めて完全に合成されたものであり、日本で開発され、1989年に日本から報告されました。
アムルビシンは、このように世界初の完全合成による抗生物質であることから、他の抗がん剤と比較すると心毒性が少ないという特徴を持っています。
そのため、アムルビシンの臨床試験においては、心電図が変化したという症例の報告がまったくないということです。
また、2006年に発表された臨床試験の報告においては、小細胞肺がんの患者に対する最初の抗がん剤治療として、アムルビシンを投与したというケースでは、約75%という奏効率がアムルビシンの単独治療によって得られたという報告がされています。
さらに、同じ臨床試験において、最初の抗がん剤治療ではなく、既にアムルビシン以外の何らかの抗がん剤治療を受けていたというケースにおいても、腫瘍縮小効果が約50%の確率で確認できたとのことです。
このようにアムルビシンは、小細胞肺がんへの治療効果が特に高いため、がん発症時の初回治療としても有効性が期待されている抗がん剤です。
ただ、近年においては、小細胞肺がんの標準治療はシスプラチンとイリノテカンの併用治療となっているため、アムルビシンはがんの再発時や、二次治療以降に用いられるケースが多くなっています。
その一方で、非小細胞肺がんは抗がん剤に対する感受性が高くないという特徴があります。
そのため、アムルビシンは非小細胞肺がんの治療では、イリノテカンやベバシズマブといった他の抗がん剤と併用して治療を行うということが一般的となっています。
アムルビシンの代表的な副作用としては、食欲不振、吐き気、嘔吐等の消化器症状があります。
このような症状が重度の場合、制吐剤が必要となり、5-HT3受容体拮抗薬やステロイドといった制吐剤が使用されます。
また、骨髄抑制の症状もよく発生します。
骨髄抑制によって好中球の減少が発生した場合では、感染症にかかりやすくなってしまうので、うがいや手洗いをしっかりと行い、感染症を予防することが大切となります。
もし、出血や貧血等の症状が発生した場合は、速やかに担当の医師に報告し適切な処置を受けるようにしましょう。
また、一時的なものではありますが、脱毛の症状も、アムルビシンの投与後から約2~3週間ほどから見られるようになります。
さらに、アムルビシンの投与中にアレルギー反応や血管痛、静脈炎等の症状が発生するケースもあります。
そのため、アムルビシンの投与中や投与後においても、経過観察を慎重に行う必要があります。
その他、アムルビシンの副作用として、腎機能障害や肝機能障害も報告されているため、治療中には定期的に血液検査を行い、これらの機能をチェックすることが重要です。
その際に、もし問題が見つかれば、アムルビシンの投与量の減量が検討される場合もあります。
最後に、アムルビシンは前述の通り、心毒性が少ないとされていますが、他のアントラサイクリン系の抗がん剤と併用する場合、胸部への放射線治療を受けた患者に投与する場合はリスクが上がってしまいます。
そのため、もし問題が発覚した場合は、アムルビシンの投与量を減量したりして対処するようになります。
【まとめ一覧】抗がん性抗生物質の種類
■イダルビシン(イダマイシン)
>>白血病の寛解導入両方の初期治療として活用される抗がん性抗生物質
■アムルビシン(カルセド)
>>主に小細胞肺がん、非小細胞肺がんに活用される抗がん性抗生物質
■アクラルビシン(アクラシノン)
>>心臓への副作用を軽減する目的で開発された抗がん剤
■アクチノマイシンD(コスメゲン)
>>1940年、抗がん作用を持つことが世界で初めて確認された抗生物質