テモゾロミド(テモダール)とは?効果・副作用は?
悪性度の高い脳腫瘍等に使用されるテモゾロミド(テモダール)
テモゾロミド(テモダール)とは、アルキル化剤に属している抗がん剤で経口投与が可能であり、テモダールはその商品名となっています。
テモゾロミドは悪性度の高い脳腫瘍である初発・再発の星状細胞腫(膠芽腫等)の治療に用いられている以外には、悪性黒色種の治療にも海外では用いられています。
また、海外では承認外用法とはなりますが、乏突起神経膠腫の治療に、忍容性が低いとされているPCV療法の代わりにテモゾロミドによる治療を行っている国もあります。
テモゾロミドはダカルバジンの次世代の医薬品として開発された薬で、アメリカにおいては1999年8月に、日本においては2006年7月に承認されています。
効果・効能は?
脳腫瘍においては、腫瘍を手術で取り除いても、その腫瘍が悪性腫瘍であれば、脳組織に残ったがん細胞が細胞分裂を行って、がんが再発してしまうため、化学療法を行うことによって再発を防止します。
がん細胞は、その細胞の増殖速度が正常細胞と比較して異常に速いという特徴があるため、細胞分裂の速い細胞のみに攻撃を加えることができれば、がん細胞のみを細胞死に導くことができると考えられます。
細胞が分裂を行うためには、生命情報の全てが刻まれているDNAの複製を行う必要があり、このDNAの複製ができなければ細胞分裂は止まります。
そのため、抗がん剤はDNA合成を阻害するように作用します。
このような考えから、テモゾロミドはDNAへ直接結合することでDNA合成を抑制し、抗がん作用を示すことができます。
DNAは二重らせん構造となっており、ある種の抗がん剤は橋を架けるようにDNAへ結合し、これによってDNAはほどけなくなります(架橋反応)。
この架橋反応によってDNAの複製が阻害され、架橋反応によって細胞分裂を抑制する抗がん剤をアルキル化剤と呼んでおり、テモゾロミドはその一種です。
テモゾロミドは脳の腫瘍である「悪性神経膠腫」の治療にもよく用いられていますが、この際に放射線治療を単独で実施するよりも、テモゾロミドと放射線治療を組み合わせた治療を行う方が生存率を改善させる効果があるとされています。
ちなみに、この「悪性神経膠腫」において、テモゾロミドを単独で使用した場合、初回再発の「悪性神経膠腫」に対する腫瘍縮小効果は約34%となっています。
気になる副作用は?
テモゾロミドの副作用としてもっとも多いものは、嘔吐や吐き気、食欲不振等の胃腸症状となっています。
また、前述のような放射線治療を併用している場合では、発疹や脱毛等の症状が見られる場合もありますが、その副作用の症状が軽い場合は治療を優先するというケースも多くなっています。
テモゾロミドの副作用でもっとも重要となっているのが骨髄抑制にともなう血球減少であり、この症状に気づかないまま白血球が極端に減少してしまうと、身体の抵抗力が落ちてしまうため、重い感染症にかかりやすくなってしまいます。
また、この骨髄抑制によって敗血症や肺炎を発症したり、潜伏していたB型肝炎ウイルスが再活性化してしまったりする可能性も考えられます。さらに、血小板が減少することによる出血、赤血球の不足による貧血にも注意が必要となります。
テモゾロミドの投与中に、咳や痰、発熱やのどの痛み、強い疲労感、歯茎出血や皮下出血等の出血傾向等の症状が発生したら、骨髄抑制が発生している可能性がありますので、すぐに担当の医師に報告して指示を仰ぐようにしましょう。
投与時の注意点は?
テモゾロミド投与時の注意点として、テモゾロミドには催奇形性、胎児毒性、生殖毒性があるということがあります。
そのため、妊婦にテモゾロミドを使用できず、また、テモゾロミドは乳汁中に分泌されてしまうため、服用中は授乳することはできません。
男性患者においても、テモゾロミドは性腺に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、小児の患者、もしくは将来子供がほしいと考えている男性が使用する場合には、事前に医師と相談する必要があり、治療前に精液の低温保存を勧められることもあります。
【まとめ一覧】アルキル化剤の種類
■ニムスチン(ニドラン)
>>いろいろながんの治療に適応しているアルキル化剤
■ダカルバジン(ダカルバジン)
>>ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、膵ランゲルハンス島腫瘍、肉腫等の治療に適応しているアルキル化剤
■イホスファミド(イホマイド)
>>ナイトロジェンマスタード系のアルキル化剤に分類
■テモゾロミド(テモダール)
>>悪性度の高い脳腫瘍等に使用されるアルキル化剤
■プロカルバジン(塩酸プロカルバジン)
>>1973年に悪性リンパ腫の治療薬として承認されたアルキル化剤
■ラニムスチン(サイメリン)
>>田辺三菱製薬よりストレプトゾトシンを基本骨格として創薬されたアルキル化剤
■メルファラン(アルケラン)
>>骨髄腫治療薬として承認されているアルキル化剤
■シクロホスファミド(エンドキサン)
>>投与されると肝臓で代謝され、活性代謝物へと変化し薬効を示すアルキル化剤
■ブスルファン(ブスルフェクス、マブリン)
>>アルキル化薬に属する、かなり強力な抗がん剤