ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)とは?効果・副作用は?
急性骨髄性白血病に対して使われるゲムツズマブオゾガマイシン
ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)とは、抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用されます。
ゲムツズマブオゾガマイシンは、ヒト化モノクローナル抗体(ゲムツズマブ)部分とカリケアミシン系のオゾガマイシン部分から構成されており、マイロターグはその商品名となっています。
ゲムツズマブオゾガマイシンは、米国においては2000年から2010年まで販売されていました。
しかし、シタラビン・ダウノルビシン併用療法への上乗せや、シタラビン大量投与への上乗せにおいて有効性がみられず、さらに死亡例が増加してしまったとして承認取り下げとなっています。
ゲムツズマブオゾガマイシンは、日本においては2005年5月に承認されました。
ただ、その添付文書の警告欄において、他の抗悪性腫瘍剤と併用しないという警告がされており、販売自体は継続されています。
ゲムツズマブオゾガマイシンは、米国のFDAにおいて、2000年に迅速審査で承認されましたが、その対象疾患は60歳以上の再発性急性骨髄性白血病に限られており、標準治療の対象とならないものでした。
FDAはゲムツズマブオゾガマイシン承認後の最初の年に、骨髄移植しない場合の静脈閉塞性疾患(VOD)のリスク増加という黒枠警告を設置させましたが、その後、骨髄移植を実施した場合においてもVODのリスクが増加するということが示されました。
FDA迅速審査プロセスに従い、第3相比較臨床試験が2004年に開始されましたが、憂慮すべき事象の発現により中止されています。
その時に評価されていた症例について見てみると、致死的毒性の発現率が標準治療群と比較して、ゲムツズマブ併用群において有意に増加している結果が出ています。
その死亡率は標準治療群が1.4%(4/281)であったのに対し、ゲムツズマブ併用群においては5.7%(16/283)でした。
このような結果とFDAからの要請を受けて、ファイザーは2010年6月、ゲムツズマブオゾガマイシンを市場から回収しましたが、他国の行政機関はFDAに同調しませんでした。
日本のPMDAは、「ゲムツズマブオゾガマイシンのリスク-ベネフィットバランスは承認時と変わらない」という見解を示しています。
ゲムツズマブオゾガマイシンは、再発または難治性の急性骨髄性白血病が適応となります。
従来、急性骨髄性白血病に対しては、アントラサイクリン系薬にシタラビンを加えたレジメンが広く用いられていました。
このレジメンによって約50〜80%の寛解導入率が得られていましたが、その大半の患者が病気を再発してしまい、長期生存を得たのは患者全体の約3割にも満たないというのが現状となっていました。
そのような中でも、60歳以上の高齢者においては、寛解導入率は約50%以下、長期生存率は約0〜15%程度という厳しい状況となっていました。
そこで、難治例や再発例の急性骨髄性白血病に対する次の治療手段として、ゲムツズマブオゾガマイシンが用いられるようになりました。
その臨床試験の結果としては、まず単独療法による治療成績を見てみると、無治療で第1再発期にあった、その6割近くが60歳以上となっている患者群にゲムツズマブオゾガマイシンを単独で使用したところ、2回の投与で約26%の患者に白血病細胞が消失する等の効果が得られました。
次に、併用療法による治療成績では、難治性または再発の急性骨髄性白血病の患者に対して、抗がん剤3種類+ゲムツズマブオゾガマイシンを使用した場合、約34%の患者に治療効果が得られ、これはゲムツズマブオゾガマイシン単独療法や従来の救済療法よりも優れた成績となっています。
ゲムツズマブオゾガマイシンは肝臓に障害を及ぼしやすいとされており、肝静脈閉塞症等の重い副作用が多く発生しています。
また、ゲムツズマブオゾガマイシンの投与後すぐに、アナフィラキシー・ショック等の重い過敏症が発生するというケースもあるため、投与する前に抗ヒスタミン薬等の投与が行われることもあります。
さらに、骨髄抑制という副作用の症状も投与されたほとんどの人に発生し、重篤化するケースも多くなっています。
このように、急性で致命的な副作用が発生するケースも多くなっていることから、ゲムツズマブオゾガマイシンは十分に経験を積んだ専門医による使用が望ましいとされています。
服用の際は十分に注意し、医師の説明をよく聞いて、副作用等についてよく理解するようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬