ゲフィチニブ(イレッサ)とは?効果・副作用は?
分子標的治療薬の一種「ゲフィチニブ(イレッサ)」
ゲフィチニブ(イレッサ)とは、内服抗がん剤であり、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを選択的に阻害し、がんの増殖等に関係する特定の分子を標的にして攻撃する分子標的治療薬の一種です。
ゲフィニチブはアストラゼネカ社が製造・販売しており、イレッサはその商品名となります。
ゲフィニチブは、主として再発または手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬として使用されています。
ゲフィニチブは、世界で初めて日本で2002年7月5日に承認されました。
その後、アメリカ食品医薬品局(FDA)で2003年5月5日に承認され、その他にもいくつかの国で承認を受けています。
しかし、偽薬であるプラセボとの無作為比較臨床試験を行った結果、生存期間の延長を確認することができませんでした。
そのため、アストラゼネカ社は2005年1月4日、ゲフィニチブの欧州医薬品局(EMEA)への承認申請を取り下げています。
さらに、FDAは2005年6月17日にゲフィニチブ薬剤の新規使用を原則禁止としています。
その後、欧州医薬品局はIPASS試験、INTEREST試験という2つの無作為化第3相臨床試験の結果を受け、成人のEGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を確認できた非小細胞肺がんのみを対象としてゲフィニチブの販売を承認しました。2009年時点において、ゲフィニチブを承認している国は欧州、メキシコ、オーストラリア、アルゼンチン、そして日本を含めたアジア諸国となっています。
ゲフィニチブの化学構造はキナゾリン系の小分子であり、アファチニブ(ジオトリフ)、エルロチニブ(タルセバ)といった薬剤と同系となっています。
ゲフィニチブは前述の通り、安全性と有効性が十分に証明されていないため、一次治療に必ず使用するという薬剤ではなく、他の標準的な化学療法が副作用で使用できない場合、その効果が不十分である場合にこの薬剤が使用されます。
前述の通り、ゲフィニチブによる明確な生存期間の延長は確認されていませんが、EGFR遺伝子変異が陽性である場合においては、無憎悪生存期間について優越性が示されています。
日本国内で最近実施された小規模臨床試験(EGFR遺伝子変異が陽性である患者を対象)においても、無憎悪生存期間が約2倍程度延長できたという症例があるようです。
効果・効能の見直しが実施されています
2011年、ゲフィニチブのEGFR遺伝子変異の有無による有効性が検討され、効果・効能の見直しが実施されて、その改定後においては、EGFR遺伝子変異が陽性の場合に限り適応とされました。
そのため、治療効果が望めないEGFR遺伝子変異陰性の症例は適用外となりました。
その他、ゲフィニチブの治療効果が高まる背景因子としては、女性であること、東洋人であること、非喫煙であること、腺がんであること等が挙げられます。
ゲフィニチブの副作用として、もっとも注意が必要なのが間質性肺炎等の肺にあらわれる副作用です。
このような肺障害の副作用はかなりの頻度で発生し、この副作用による死亡例も多く報告されています。
そのため、息苦しさ、から咳、息切れ、発熱といった肺障害に関係する初期症状が発生した場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
初期対応が遅れると症状が重症化し、治療が困難となるため、十分に注意するようにしましょう。
その他のゲフィニチブの副作用としては、脱水症状や肝障害、重度の下痢等の注意を要するものや、ニキビのような発疹もかなりの頻度で発生します。
もし、普段と違う症状等に気づいたらそのまま放置せず、すぐに担当の医師に報告するようにし、早めの対応をとれるようにしておきましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬