セツキシマブ(アービタックス)とは?効果・副作用は?
がんの増殖などに関係する特定の分子を標的にして攻撃するセツキシマブ
セツキシマブ(アービタックス)とは、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することによって、EGFRの働きを阻害するモノクローナル抗体であり、抗がん剤として使用されています。
セツキシマブ(アービタックス)は、分子標的治療薬の一種であり、がんの増殖などに関係する特定の分子を標的にして攻撃します。
セツキシマブ(アービタックス)は、米国のイムクローン・システムズ社によって開発・製造され、ブリストル・マイヤーズスクイブ社によって販売されており、アービタックスはその商品名となっています。
セツキシマブはヒト・マウスキメラ化モノクローナル抗体で、lgG1に属しており、点滴静注にて使用されます。セツキシマブは米国食品医薬品局(FDA)、日本などにおいてEGFRを発現する転移性大腸がんに対する治療薬、もしくはEGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療薬として承認を受けています。
セツキシマブは前述の通り、EGFRを標的として攻撃する分子標的薬となっています。
このEGFRとは、細胞が増殖するためのスイッチの役割を持っており、腫瘍の表面にはたくさんのEGFRがあります。
その中でも、特に大腸がんにおいては、その症例の約80%にEGFRが存在するといわれています。
セツキシマブはEGFRの働きを阻害する薬であるため、腫瘍の細胞にEGFRが存在する場合のみ、その治療効果を発揮します。
そのため、セツキシマブの使用前に、腫瘍細胞にEGFRがあるかどうかを調べることで、その腫瘍細胞にセツキシマブが有効かどうかを判断することができます。
腫瘍細胞にEGFRが存在する場合、EGFRから細胞を増殖させるシグナルが送られ、そのシグナルを送る過程にはKRASという遺伝子が関わっています。
セツキシマブを投与すると、EGFRと結合し、その影響によって、細胞を増殖させるシグナルが送られなくなるのですが、前述のKRAS遺伝子が変異している場合では、セツキシマブがEGFRと結合しても細胞の増殖が止まらなくなり、治療効果があらわれなくなります。
したがって、セツキシマブの投与の前には、腫瘍細胞にEGFRが存在しているか(EGFR陽性)、また、KRAS遺伝子が正常の野生型であるか、変異している変異型であるかを調べる必要があります。
この際、もしEGFRが存在していなかったり(EGFR陰性)、EGFRが陽性でもKRASが変異型であった場合においては、セツキシマブではなく、他の薬剤での治療を実施するようになります。
症状を悪化させずに過ごせる期間が延びたり、延命効果があるということがわかっています。
従来、進行して治療切除が不可能となった結腸・直腸がんやがんが再発した患者においては既存の化学療法ではなかなか余命を延ばすことができず、そのような場合は緩和療法や対症療法等によって余命を出来る限り過ごすという方法しかありませんでした。
セツキシマブを投与した場合、このような対症療法と比較して、その症状を悪化させずに過ごせる期間が延びたり、延命効果があるということがわかっています。
また、セツキシマブと他の抗がん剤を併用使用した場合、他の抗がん剤のみでは治療効果が無かったという患者においても、その症状が悪化せずに過ごせる期間が延びるという効果があったということです。
さらに頭頸部がんについても、セツキシマブは放射線療法や白金製剤の抗がん剤(シスプラチンやカルボプラチン等)との併用で使用した場合、既にがんが進行していたり、がんが再発したという患者に対しても、その症状を悪化させずに過ごせる期間が延びたり、延命効果があったということです。
セツキシマブの副作用としては、皮膚症状が多く発生するとされています。
セツキシマブの投与を開始した後、1週間ほどでニキビのような発疹が発生したり、1ヶ月後には爪周囲炎や皮膚の乾燥、ひび割れ等も発生することがありますので、紫外線からガードしたり、外用薬の塗布や適切なスキンケア等で対策することが大切となります。
さらに、インフュージョンリアクションというアレルギー反応に似た副作用が発生する場合もあり、この場合はセツキシマブの投与後すぐに悪寒や発熱などの症状が現れ、症状がひどい場合にはショック状態に陥ることもあります。
そのため、セツキシマブの初回投与時には特に慎重な観察が必要となります。
その他の副作用としては、患者の半数以上で下痢の症状が見られたり、低マグネシウム血症が電解質バランスの崩れによって発生することがあります。
低マグネシウム血症は倦怠感や震え等の症状につながることもあるので、セツキシマブの治療中は定期的な血液検査を必ず実施するようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬