メトトレキサート(メソトレキセート)とは?効果・副作用は?
急性および慢性白血病等に使用されるメトトレキサート(メソトレキセート)
メトトレキサート(メソトレキセート)とは抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)で、免疫抑制剤に分類されており葉酸代謝拮抗機序を持っています。
メトトレキサート(メソトレキセート)は、ファイザー社から販売されており、メソトレキセートはその商品名となっています。
メトトレキサートは、急性および慢性白血病のほか、絨毛がん等の絨毛性疾患に使用され、白血病においてはメトトレキサート単独での治療か、またはメルカプトプリン等との併用治療が行われます。
また、悪性リンパ腫や急性白血病によって、中枢神経系への浸潤が発生した場合等においては、ロイコボリンとの併用治療が行われます。
その他、乳がんに対しては、シクロホスファミドとメトトレキサートとフルオロウラシルの併用療法であるCMF療法、胃がんに対しては、メトトレキサートとフルオロウラシルの併用療法であるMTX/5-FU抗体療法、尿路上皮がんに対しては、メトトレキサートとビンブラスチンとドキソルビシンとシスプラチンの併用療法であるM-VAC療法が保険適用として承認されています。
メトトレキサート(メソトレキセート)の効果・効能は?
がん細胞は細胞分裂を繰り返すことで、増殖を絶え間なく継続するという性質を持っており、この細胞分裂を行うためには生命情報が刻まれているDNAの複製が必要となります。
そのため、このDNA合成を抑えられれば細胞分裂が止まり、がん細胞の増殖を抑えることができるため、これが昔からある抗がん剤の作用のメカニズムとなっています。
その抗がん剤の中でも、葉酸代謝に関わる経路を阻害することによってDNA合成を抑えることができる薬があり、このような種類の薬は葉酸代謝拮抗薬と呼ばれています。
DNA合成を行う際、葉酸という物質が必要となりますが、葉酸は体内で合成できないため、食物から摂取する必要があります。
食物から摂取された後に、腸管から吸収された葉酸は、次にDNA合成に使用されるために代謝を受けるようになります。
この栄養素として腸から吸収された葉酸は、酵素による代謝によって、テトラヒドロ葉酸という物質に変換され、このテトラヒドロ葉酸がDNA合成に関与します。
葉酸がこのテトラヒドロ葉酸へと変換される過程では、ジヒドロ葉酸レダクターゼという酵素が作用しているため、この酵素の働きを阻害すればテトラヒドロ葉酸が作られなくなります。
このテトラヒドロ葉酸が作られなくなれば、DNA合成に必要な原料を作れなくなるため、DNA合成が抑えられ、細胞増殖がストップすることになります。
このように、葉酸をテトラヒドロ葉酸へと変換するジヒドロ葉酸レダクターゼという酵素を阻害することでDNA合成を抑制し、抗がん作用を示す薬がメトトレキサートです。
メトトレキサートの副作用は?
メトトレキサートの副作用の中でもっとも重要なものが骨髄抑制にともなう血液障害であり、白血球が異常に減少すると身体の抵抗力が著しく落ちて感染症にかかりやすくなります。
また、血小板が減少することにより、出血を生じることもあるため、歯茎出血や皮下出血、もしくは発熱やのどの痛み等の症状が発生した場合は速やかに担当の医師に報告するようにしましょう。
また、メトトレキサートの副作用では、口内炎、下痢、嘔吐、吐き気等のいろいろな症状の副作用が発生しやすいため、治療の開始前に担当の医師から十分に説明を受けて、実際に症状が発生した際に慌てないようにしましょう。
その他、メトトレキサートの副作用の中で、腎障害、腸炎、肝障害、間質性肺炎等が発生する場合もありますので注意が必要です。
皮膚や白目が黄色くなる、下痢、空咳、異常なだるさ、口内炎、息切れ等の症状に注意するようにしましょう。
そして、メトトレキサートでの治療中には、これらの副作用の予防のために、検査を高い頻度で行うようにし、経過観察を慎重に行うようにしましょう。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤