カルモフール(ミフロール)とは?効果・副作用は?
大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性があるカルモフール
カルモフール(ミフロール)とは、代謝拮抗剤に分類される抗がん剤であり、日本国内で1970年代に開発されました。
その後、大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性が確認されたため、1981年に承認されています。
カルモフールの効果・効能は?
カルモフールは、がん細胞の核酸代謝に関わる部位に作用し、核酸のDNA形成やRNAの形成を阻害し、がん細胞を死滅させます。
また、カルモフールは、フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグでもあるので、腸管から吸収され、徐々にフルオロウラシルに変化していくことから、治療効果の持続性にも優れています。
さらに、カルモフールは肝臓の酵素に依存せず、フルオロウラシルに変換されるという特徴も持っています。
カルモフールの副作用として特徴的なものは、頻度の多い尿意と熱感があります。
その他の副作用としては、嘔吐や吐き気、口内炎、下痢等のいろいろな症状が発生しやすくなっていますので、予想外の症状が発生したとしても慌てないように、カルモフールでの治療を始める前に、副作用について担当の医師から十分に説明を受けておくようにしましょう。
また、副作用の症状が軽い場合においては、がんの治療のほうを優先させるというケースも多くなっています。
カルモフールの副作用はあるの?
カルモフールの副作用において、抗がん剤の特有の副作用といえる骨髄抑制の症状は、他の抗がん剤使用時と比較すると、その症状は軽いほうとなっています。
しかし、それであっても、骨髄抑制にともなう血液障害には十分に注意する必要があります。
骨髄抑制による血液障害によって白血球が異常に減少すると、身体の抵抗力が著しく落ちてしまうため、感染症にかかりやすくなってしまい、また、血小板が減少することによって出血が発生するということもあります。
そのため、のどの痛みや発熱、もしくは歯茎出血・皮下出血等の出血の症状が発生した場合は、すぐに担当の医師に報告するようにし、指示を仰ぐようにしましょう。
さらに、カルモフールの副作用のなかで特に注意が必要なものとして、激しい下痢と脱水症状の症状をともなう腸炎と、白質脳症があります。
白質脳症とは、脳の大脳白質という部分に障害が起き、いろいろな神経症状があらわれる脳症です。
白質脳症が進行すると痴呆のような症状となり、また、抗がん剤の量が多いと発症しやすいとされているので、肝臓や腎臓の働きの悪い人、体重の軽い人、高齢の人は特に注意が必要とされています。
カルモフールを使用した際の白質脳症の発生率は、約0.04%と推定されていることから、稀な副作用であり、また、早期に発見し、すぐに投与を中止すれば多くの場合、回復するとされています。
そのため、白質脳症の初期症状である、手足のしびれ、舌のもつれ、歩行時のふらつき等の症状が発生した場合は、すぐに担当の医師に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。
カルモフールの使用時の注意点としては、まず投与中の禁酒があります。
カルモフールの投与中にアルコールを摂取すると、強い二日酔いのような症状を引き起こしてしまうため、投与中はお酒を飲まないようにしましょう。
また、重い骨髄抑制や消化器障害の症状が発生する可能性があるため、カルモフールと抗がん剤のTS-1との併用はできません。
さらに、抗血栓薬のワルファリンカリウムや抗てんかん薬のプェニトインとカルモフールを併用すると、これらの薬剤の作用が増強されてしまう可能性がありますので注意が必要です。
最後に、妊婦や妊娠の可能性がある人は必ず担当の医師と相談してからカルモフールの治療を始めるようにしましょう。
妊娠中の人はカルモフールを使用することはできず、授乳中の人は授乳を中止する必要があります。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤