テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)とは?効果・副作用は?

、経口の抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)の一種テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1:ティーエスワン)
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1:ティーエスワン)とは、代謝拮抗剤に分類されている、経口の抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)の一種です。日本では大鵬薬品工業で製造・販売されており、TS-1:ティーエスワンはその商品名となっています。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムはこれらの3つの有効成分を配合させた薬であり、フッ化ピリミジン系抗がん剤と呼ばれることもあります。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの効果・効能は?
フルオロウラシルという抗がん剤は古くから使用されていますが、このフルオロウラシルを投与すると細胞がDNA合成するときの原料と間違えて細胞内に取り込んでしまいます。
これにより、DNAの原料として本来の原料とは違う物質が利用されるため、DNAの合成が止まり、その結果、細胞分裂を抑制します。
フルオロウラシルはこのような働きを持っているため、長年にわたって抗がん剤として使用されてきましたが、薬の作用時間が短いという欠点もありました。
そこで、作用時間を持続させるため、身体の中で代謝を受けることで、徐々にフルオロウラシルに変換されるようになる薬として開発された薬がテガフールです。
このように体内で代謝されて、薬として作用する形に徐々に変化する医薬品をプロドラッグと呼び、テガフールはフルオロウラシルをプロドラッグ化したものです。
テガフールがフルオロウラシルに変換される際は、肝臓の代謝酵素の働きによって変換されます。
このテガフールは副作用が強く、このままでは抗がん作用が十分ではないという欠点があります
このテガフールは副作用が強く、このままでは抗がん作用が十分ではないという欠点があるため、これを補う有効成分としてギメラシルとオテラシルが重要となります。
テガフールがフルオロウラシルに変換されると、すぐに肝臓で代謝・不活性化されてしまうのですが、この代謝・不活性化を阻害することができればフルオロウラシルの作用を持続させることができます。
このような働きを持つ有効成分がギメラシルであり、この働きによりさらなる抗がん作用を得ることができます。
また、この肝臓での代謝・不活性化の時に出る分解物は、神経毒性にも関係しています。
そのため、ギメラシルはフルオロウラシルによる神経毒性関連の副作用を軽減する働きも持っています。
一方、がん細胞は細胞分裂が通常の細胞と比較して速くなっていますが、消化管の細胞は通常の細胞の中でも細胞分裂が速い特徴があります。
そのため、フルオロウラシルががん細胞だけではなく、実際には消化管にも作用してしまうため、副作用が引き起こされてしまいます。
そこで、消化管細胞においてフルオロウラシルが活性化しないようにして、下痢等の副作用を軽減させる薬として開発されたのがオテラシルカリウムです。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムは、胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤です。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの臨床試験の結果では、薬の投与による奏効率として、胃がんや大腸がん(結腸・直腸がん)で32.6%、頭頸部がんで34.1%となっており、他の抗がん剤と併用することによって、さらに高い奏効率を得ることができるとされています。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの副作用は?
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの副作用としては、口内炎、嘔吐、下痢、吐き気等の様々な副作用が出ることが多くなっています。
ただ、骨髄抑制等の他の抗がん薬に特有な症状は比較的軽くなっています。
しかし、白血球が異常に減少すると、身体の抵抗力が著しく落ちて感染症にかかりやすくなったり、血小板減少によって出血しやすくなることもあります。
そのため、歯茎出血・皮下出血等の出血傾向、のどの痛みや発熱等の症状が発生したら、すぐに医師に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。
また、肺がんで治療を受けている方には、間質性肺炎がみられることもあり、重症患者すると治療が困難になる可能性もあります。
発熱や空咳、息苦しさ、息切れ等の症状に注意し、レントゲン検査も定期的に受けるようにしましょう。
その他の重い症状の副作用としては、肝障害、脱水症状や激しい下痢をともなう重い腸炎、白質脳症があります
。白質脳症はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムを長期にわたって服用している方に稀に発生する副作用です。
その初期症状としては、舌のもつれ、物忘れ、手足のしびれ、歩行時のふらつき等が発生しますので、心当たりがある症状がある場合には、すぐに担当の医師に報告するようにしましょう。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤