抗がん剤 治療 副作用

がん細胞を自死(アポトーシス)に導くゲムシタビン(ジェムザール)

ゲムシタビン(ジェムザール)とは、フッ素ヌクレオシドの一種で抗がん剤として使用されています。
ゲムシタビン(ジェムザール)はイーライリリー・アンド・カンパニーが開発した薬で、ジェムザールはその商品名となります。

ゲムシタビンは「シトシン」という、DNAを合成するピリミジン塩基に似た物質であることから、投与すると「シトシン」と認識されて体内に取り込まれます。
そのため、がん細胞の正常なコピーを阻害することができ、最終的にがん細胞を自死(アポトーシス)に導きます。

ゲムシタビンの作用機序・効果・効能は?

このようなゲムシタビンの作用機序は、「シタラビン(キロサイド)」という同じピリミジン拮抗薬と似ています。
しかし、シタラビンと違ってゲムシタビンは、細胞周期に関係なく作用するため、より高い抗腫瘍効果を発揮しますので、シタラビンが不得意としている、固形がんの治療に活用されています。

ゲムシタビンは、すい臓がん、胆道がん、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、化学療法の後に悪化した卵巣がん、手術での切除が不能な乳がんが適応となっていますが、すい臓がんについては治療への活用というよりは、疼痛の緩和やPS(活動状態)の改善といった、がんの症状を緩和させることが主目的となります。

ゲムシタビンは、進行性のすい臓がんについては、ゲムシタビン単剤での療法が実施されます。
それ以外のがんについては、「シスプラチン」との併用療法が多く実施されており、これは「ゲムシタビン+シスプラチン療法」とも呼ばれています。

「ゲムシタビン+シスプラチン療法」とは?

「ゲムシタビン+シスプラチン療法」は、非小細胞肺がんの化学療法でよく実施されています。
ただ、シスプラチンは抗がん剤の中でも吐き気の副作用が発生するリスクが高いため、吐き気への対策をしっかり行ってから、治療を始めることが大切です。

また、最近の研究においては、「S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)」という内服薬タイプの抗がん剤との併用による治療が効果的であるという報告をされています。また、「ゲムシタビン+シスプラチン療法」は胆道がんの化学療法でも実施されています。

胆道がんの場合

胆道がんはすい臓がんと同様に、早期発見が難しく治療しにくいがんであるとされており、長らくゲムシタビンの単剤投与が標準治療とされてきました。

しかし現在においては、「ゲムシタビン+シスプラチン療法」のほうが、ゲムシタビンの単剤投与よりも生存期間を延長できることが判明したため、切除不能の胆道がんにおいては「ゲムシタビン+シスプラチン療法」が標準治療となっています。

すい臓がんの場合

次にすい臓がんついては、その症例のなかでも、予後の良くないものについての化学療法の中心は、長らくゲムシタビンの単独療法が採用されていました。

しかし近年においては、従来のゲムシタビン単独療法より「ナブパクリタキセル(アブラキサン)」を一緒に併用することで生存期間が延長されるという研究報告がされたため、「ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法」を実施するケースが増えています。

さらに近年では、分子標的薬の「エルロニチブ」や経口薬の「S-1」等が開発されたため、化学療法の選択肢が広がっています。

卵巣がんの場合

次に卵巣がんについては、ゲムシタビンは単独で使用されるほか、近年では「カルボプラチン」というプラチナ製剤と併用で治療することによって、無進行生存期間が延長されるという研究報告がされています。

さらに、乳がんについては、再発した乳がん、もしくは手術での切除不能となった乳がんにゲムシタビンが使用されており、このような乳がんにはゲムシタビンの単剤投与が一般的です。

しかし近年、「パクリタキセル」と併用する「ゲムシタビン・パクリタキセル併用療法(GT療法)」のほうが治療効果が高いという研究報告がされたため、こちらの治療法が新たな標準治療になる可能性もあります。

ゲムシタビンの代表的な副作用は?

ゲムシタビンの代表的な副作用としては骨髄抑制があるため、感染症には十分に注意する必要があります。
ただ、ゲムシタビンは、抗がん剤特有の嘔吐や吐き気、全身倦怠感、脱毛といった副作用の症状は軽いものであるケースが多いため、一般的には使用しやすい薬とされています。

また、その他の重篤な副作用に関しても、比較的発生しにくいとされていますが、稀に間質性肺炎による死亡例も報告されています。
そのため、ゲムシタビンでの治療中や治療後は、慎重に経過観察を行うようにしましょう。

【まとめ一覧】代謝拮抗剤

メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤

メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤

ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤

ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤

フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤

フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤

ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤

ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤

ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤

テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤

テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤

シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤

シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤

クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤

カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬

エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬

ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤




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