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甲状腺癌(がん)とは?特徴や症状は?5種類に分類。
首のしこりや腫れは要注意!甲状腺癌(がん)の症状は?
甲状腺は喉元の甲状軟骨(通称:のどぼとけ)を包み込むように下から支えている臓器です。
この部分に発生する癌を「甲状腺癌」といい、他の胃癌や肺癌のようにメジャーな癌ではありませんが、身体の表面近くにある甲状腺にできる癌のため、自分で行う触診で発見することも可能な癌となっています。
日本での「甲状腺癌」の粗羅患率(年間10万人あたりにおいて、何人が「甲状腺癌」にかかるかを表した指標)をみると、男性:3.4、女性:10.8という結果が出ています。
(2005年の国立がん研究センター統計)その他の癌で、例えば胃癌の例をみると、男性:128.5、女性:56.6となっているため、「甲状腺癌」の女性のかかりやすさと発生率の少なさが際立っています。
したがって、「甲状腺癌」は発生率はそれほど高くないものの、女性にとっては注意が必要な癌であると言えると思います。
「甲状腺癌」は、その病理組織型から「乳頭癌」、「濾胞癌」、「髄様癌」、「未分化癌」、「悪性リンパ腫」の5種類に分類
それぞれの種類の癌によって全く性質が異なるという特徴があります。
ただ、共通している初期症状としては、首のしこりや腫れがあります。
この段階では痛みや異物感は無く、実際に喉に触って気が付く程度です。
さらに進行すると、腫瘍が大きくなり、食道の圧迫による、食べ物を食べる時のつかえるような違和感が出てきます。
その後、甲状腺から周囲へ癌が浸潤すると血痰が出たり、呼吸困難になってしまうこともあります。
「乳頭癌」は、日本で発生している「甲状腺癌」全体の中で、大部分の約70~80%を占めている癌です。
濾胞上皮細胞という甲状腺ホルモンを分泌する高度に分化した細胞が癌細胞化したもののため、分化癌と呼ばれています。
このように分化の程度が高い癌なので悪性度が低く、転移も無く、癌の成長速度も緩やかで、微小な腫瘍の場合、倍の大きさになるのに数年を要するケースもあるそうです。
30~60歳代の女性に発生するケースが多く、若年発症のケースも多いのですが、早期治療を行うと予後は良好で、10年生存率は80%以上とされています。
また、癌の腫瘍が小さかったケースにおいて、30年生存率が95%以上達成されているという施設もあるようです。
治療の第一選択は手術なのですが、このように予後良好なため、切除範囲をどの程度の範囲まで広げるかは難しくなります。
また他には、TSH抑制療法、放射線外照射、放射性ヨード治療等の治療法も行われています。
「濾胞癌」は日本で発生している「甲状腺癌」全体の中で、約10~15%を占めている癌です。
「乳頭癌」と同様に悪性度の低い癌ですが、「乳頭癌」よりも骨や肺に転移しやすい癌となっています。
ただ、癌の進行は緩やかなので、「濾胞癌」の10年生存率は50%を超えています。
また、「濾胞癌」は「乳頭癌」と異なり、リンパ節転移を起こす可能性が低いため、手術治療時においてリンパ節郭清は行わない、ということが多くなっています。
「濾胞癌」は「乳頭癌」と同じく女性に多い癌ですが、発生年齢は少し高く、40~60歳代が中心となっています。
「髄様癌」は日本で発生している「甲状腺癌」全体の中で、約1~2%しかない、ごくまれな癌です。
その中で約80%は孤発性ですが、約20%は遺伝性の家族性発症となっています。
この癌も悪性度は高くなく、癌の進行も緩やかなので、10年生存率は孤発性例で約40%、家族性発症例で約80%とされています。
治療の第一選択は手術による切除ですが、TSH抑制療法、放射性ヨード治療は効果がないとされています。
「髄様癌」は「乳頭癌」と同じく女性に多い癌で、発生年齢は、30~50歳代が中心となっています。
「未分化癌」は、日本で発生している「甲状腺癌」全体の中で、約2~3%しかないまれな癌ですが、悪性度は最も高く、癌の進行度も非常に速い癌です。
「未分化癌」は、「乳頭癌」または「濾胞癌」が変異して転化したものと考えられていますが、すべての悪性腫瘍の中でもっとも予後不良の癌であるとされています。
このような癌なので、3年生存率で約10%以下、5年生存率で約5%以下という低い生存率となっており、診断後約1年以内に80%の患者が死亡すると言われています。
急激にその周囲へ浸潤するので、頚部の圧迫感、疼痛、熱感の症状が出た後、皮膚発赤、嗄声、呼吸困難、嚥下困難等の症状に至るケースもあります。
早期発見できれば、手術や抗がん剤、放射線治療を組み合わせた治療を行いますが、進行が速いため、緩和治療に移らざるを得ないケースも多々あるようです。
「悪性リンパ腫」が発生することがあります。
甲状腺には元々、リンパ組織は無いのですが、リンパ球が癌によって浸潤してしまうことによって「悪性リンパ腫」が発生することがあります。
「悪性リンパ腫」は橋本病を母地として発症することが多く、「悪性リンパ腫」の患者は約80%が橋本病も併発しているという報告もあるそうです。
早期発見できれば予後はおおむね良好で、治療は化学療法や放射線治療を単独、もしくは組み合わせて行います。
ただ、「悪性リンパ腫」の5年生存率は、個人の状況によって大きく変わってしまうため、5~85%と幅が大きくなっています。
このように「甲状腺癌」は個人の状況や癌の種類によって、その性質が全く違ってしまうため、自分の身体の状況やそれぞれの癌の性質を正しく知るということがとても重要となります。
また、女性がかかりやすい癌のため、女性にとっては乳癌や子宮癌とともに注意するべき癌の一つといえると思います。