膀胱がんは男女ともに60歳以降の高齢者で増加している傾向
膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的にためておく一種の袋のような役割を持っており、骨盤内にある臓器です。
膀胱やその周辺の組織は尿路上皮という粘膜で覆われていますが、「膀胱がん」はその尿路上皮ががん化することによって発生します。
そのため、「膀胱がん」の大部分である約90%以上は「尿路上皮がん」という種類になりますが、稀に「扁平上皮がん」や「腺がん」として発生する場合もあります。
「膀胱がん」の罹患率を男女の性別でみてみると、男性のほうが女性と比較して約3倍多い罹患率となっています。
また、年齢別でみてみると、男女ともに60歳以降の高齢者で増加している傾向にあり、40歳未満の若年層では罹患率は低くなっています。
国際的に「膀胱がん」の罹患率を比較してみると、欧米白人で高くなっている傾向にあり、日本人を含む東アジア系民族では低くなっている傾向にあります。
ただ、今後さらなる高齢化社会を迎える日本では、増加することが予想されますので、適切な検査を受けて早期発見に努めることが重要です。
「膀胱がん」の検査には、次のようなものがあります。
「尿検査」
「尿検査」は普通の健康診断等で実施されているものと同じで、「膀胱がん」の場合は特に血の有無を確認することが重要となります。
「膀胱がん」にかかると、その多くのケースでは目視で確認できる血尿が出るのですが、中には顕微鏡でしか確認することができない「顕微鏡的血尿」が発生することもありますので、注意が必要です。
また、「尿検査」では、尿を遠心分離機にかけることにより、わずかな赤血球を発見することも可能となっています。
さらに、膀胱は尿をためておくための器官であるため、そこにがんが発生すれば、その粘膜からがん細胞が剥がれて、尿中に混入する場合があるので、それを調べる検査を「尿細胞診」と呼んでいます。
「尿細胞診」
「尿細胞診」は陰性、疑陽性、陽性の3段階で評価され、判定が陽性の場合には、「膀胱がん」あるいは「上部尿路がん」が発生している可能性が高いと判断されます。
ただし、陽性率は70%であるため、残りの30%の人はがんがあっても見逃されることになり、また、悪性度の低い「表在性がん」では陰性を示してしまうことも多いため、正確な診断をつけるためには、画像診断等を一緒に行う必要があります。
「膀胱鏡検査(内視鏡検査)」
「膀胱鏡検査(内視鏡検査)」は、膀胱の内視鏡を尿道から膀胱へ挿入して行う検査であり、肉眼的にがんの大きさや発生部位、形状、腫瘍の数等を確認することができます。
膀胱の内側からの画像を得ることができるため、「膀胱がん」を発見するためにはもっとも有効な検査といわれています。
「腹部超音波(エコー)検査」
「腹部超音波(エコー)検査」は、身体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査であり、腫瘍や結石の有無を確認することができます。
ただ、腫瘍が発見できても良性か悪性かの区別がつけられないということのほか、小さな病変は映らないことがあるというデメリットもあります。
「CT検査」/「MRI検査」
「CT検査」は、X線を使って体の内部を描き出す検査であり、他の臓器へに遠隔転移の有無やリンパ節転移の診断、周辺臓器への広がりの程度等を診断する場合に有用といわれています。
「MRI検査」は、磁気を使用して画像を描き出す検査であり、「膀胱がん」では筋層浸潤がんの判断に使用されることが多いようです。
検査の為の費用はどのくらい??
これらの検査を受ける際の費用ですが、例えば、細胞診を受けるための費用は、人間ドック等で約6,000~7,000円程度で、保険を適用すると約2,000円程度(3割負担の場合)となっています。
また、超音波検査では、人間ドック等で約4,000~8,000円程度で、保険を適用すると約1,200~2,400円程度(3割負担の場合)となっています。
さらに、MRI検査では、人間ドック等で約30,000~45,000円程度で、保険を適用すると約9,000~13,500円程度(3割負担の場合)となっています。
「膀胱がん」の発症リスク要因として、喫煙が確実なリスクファクターとして認知されています。
したがって、前述の高齢者の男性で増加しているという傾向から、喫煙習慣のある高齢者の男性は「膀胱がん」の発症のリスクが高いといえます。
心当たりのある方は定期的に検診等を受けるようにし、「膀胱がん」の早期発見に努めるようにしましょう。