膀胱がんの手術費用、時間、入院期間は?
膀胱がんは治療の効果が出やすいがんともいわれています。
膀胱は、腎臓で作られた尿を一時的に貯蔵しておく臓器であり、その尿は尿管を通って膀胱へ運ばれています。
膀胱は下腹部に位置する、伸び縮みする袋のような臓器であり、300~500ml程度の尿を貯めることができます。
このような膀胱に発生するがんを「膀胱がん」と呼んでおり、膀胱の内側の移行上皮と呼ばれる粘膜に発生する「移行上皮がん」が約90%とその大部分を占めています。
「膀胱がん」は、泌尿器系のがんの中では2番目に多いがんとなっており、日本で「膀胱がん」に罹患する人は年間約18,000人で、死亡する人は年間約6,500人となっています。
「膀胱がん」は男性患者が多く、男性は女性の3倍「膀胱がん」になりやすいのが特徴となっています
また、40歳を超えると罹患率が上昇し、60歳以上で発症のピークを迎えます。
「膀胱がん」には他のがんと異なり、膀胱内に1ヶ所だけでなく、2ヶ所以上同時にがんが発生することがあるという特徴もあります。
また、前述した移行上皮という粘膜は、膀胱だけではなく腎臓内や尿管にもつながっているため、膀胱に発生したがんが隣接している他の臓器にも転移しやすくなっています。
ただ、「膀胱がん」は悪性度が低く、がんの進行が比較的遅いというケースも多いので、治療の効果が出やすいがんともいわれています。
「膀胱がん」の外科的治療である手術には、大きく分けて2つの方法があります。
1つは「TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)」という専用の内視鏡で腫瘍を切除する手術であり、もう1つは「膀胱全摘除術」という下腹部を切開して膀胱を摘出する手術です。
「TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)」
「TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)」は、専用の内視鏡を使って、全身麻酔あるいは腰椎麻酔を行った後、がんを電気メスで切除する方法であり、「膀胱がん」の確定診断のために病変部の組織を採取する際に、同時に実施される場合もあります。
筋層非浸潤性がんでは、「TURBT」だけでがんを完全に切除できるケースもありますが、表在性がんでは膀胱内にがんが再発しやすいという特徴もあります。
手術時間は約1時間程度となっており、病態によっては、手術当日もしくは翌日に再発予防のために、膀胱内に抗がん剤を注入する膀胱内注入療法が併用されるケースもあります。
また、手術の際の組織検査において、ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんと診断された場合、再度「TURBT」が実施されるケースもあります。
「膀胱全摘除術」
「膀胱全摘除術」は、一部の筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに最も有効な治療法とされています。
全身麻酔を実施し、下腹部を切開して、尿管を切断した後に膀胱の摘出を行い、男性では前立腺と精嚢を摘出しますが、「膀胱がん」の状態によっては尿道も一緒に摘出するケースもあります。
また、女性では一般的に膣壁の一部と子宮、尿道をセットで摘出するのが多くなっており、その際には、骨盤内のリンパ節郭清も併せて実施します。
さらに、最近では「膀胱全摘除術」を腹腔鏡下手術や、ダヴィンチによるロボット支援手術(先進医療であるため、現状、保険適応外の診療と保険診療が併用されている状況)によって実施する場合もあるようです。
このような「膀胱がん」の手術費用はどのくらい?
このような「膀胱がん」の手術費用としては、悪性度の低い「表在性がん」での内視鏡手術の場合で約10万円~15万円(3割負担の場合)程度が一般的とされているようです。
これに数日間の入院費用が加わります。
一方、「浸潤性がん」の場合、「膀胱全摘除術」が選択され、その摘出の範囲によって費用が変わってきますが、約60万円以上(入院費含む)といわれています。
また、手術が非常に大がかりとなるため、入院期間も長く、3週間~1ヶ月ほど必要となることが多いようです。このように、治療費はかなり高額となりますが、日本には所得に応じて月々の医療費の上限額が定められている「高額療養費制度」があるため、これらの治療費を全額支払う必要はなくなっています。
個々の所得にもよりますが、70歳未満で一般的な所得の方だと、月の医療費が10万円を超えるということはまずないと思われます。
また、納税者であれば年間の医療費が高額になれば「医療費控除」の対象になることもあります。治療費が高額になってしまった場合は、このような制度を活用して治療費の心配を少なくし、前向きに治療に取り組めるようにしましょう。