エベロリムス(アフィニトール)とは?効果・副作用は?
免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用なエベロリムス
エベロリムス(アフィニトール)とは、抗がん剤・免疫抑制剤の1つであり、悪性腫瘍治療薬としては商品名:アフィニトールとして、免疫抑制剤としては商品名:サーティカンとして製造・販売されています。
エベロリムスはシロリムス(別名:ラパマイシン)の誘導体であり、日本での適応症は腎細胞がんや膵神経内分泌腫瘍、心臓移植後の拒絶反応抑制等となっており、海外においても日本と同様に、免疫抑制剤としての使用だけではなく、腎細胞がん治療薬などに対しても適応するとして承認されています。
また、エベロリムスは現在、乳がん、悪性リンパ腫、胃がんに対する臨床試験が進められています。
エベロリムスの効果・効能は?
エベロリムスは、腫瘍血管新生と腫瘍細胞増殖における指令系統を分子レベルでブロックする、いわゆる分子標的治療薬です。
エベロリムスの標的分子は、腫瘍増殖や血管新生にかかわるmTORタンパクとなっており、mTOR阻害薬とも呼ばれています。
エベロリムスは、抗がん薬としては日本初のmTOR阻害薬となっており、胃がんの一次治療に用いられているキナーゼ阻害薬とは作用機序が異なっています。
胃がんの症例においては、キナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、スニチニブ等)による一次治療後に症状が悪化してしまった症例で、エベロリムスの有効性が認められているため、腎細胞がんに対抗するための3番手の薬剤としてエベロリムスは有望とされています。
また、乳がんにおいて、エベロリムスはホルモン療法の治療効果を高める補助薬としての役割が期待されています。
さらに、エベロリムスには腎細胞がんや乳がんに加え、神経内分泌腫瘍と結節性硬化症に大しての効能も追加で確認されています。
このような働きから、エベロリムスは悪性リンパ腫や胃がん等のその他のがんに対する治療薬としての効能も期待されています。
気になる副作用は?
エベロリムスの副作用として一番多く発生するのが口内炎であり、服用した方の約半数以上の方に発生するとされています。
その次に多くなっている副作用が、下痢、食欲不振、疲労、間質性肺炎、吐き気、発疹、貧血等がありますが、これらの副作用の症状が軽い場合においては、治療が優先されるというケースもあります。
ただし、副作用の症状があまりにも辛いという時には、薬の減量や休薬が必要となるので、その場合は担当の医師とよく相談する必要があります。
エベロリムスによる副作用で症状の重いものでは、間質性肺炎等の肺に現れる副作用があり、この副作用はおおよそ6人に1人くらいの割合で発生していて、その発生頻度も高くなっています。
治療時の定期検査等で早期に発見することができれば特に問題はないのですが、発見が遅れ、対応が遅れてしまうと重症化してしまい、その治療が大変になってしまいます。
これらの肺にあらわれる副作用の初期症状としては、息切れ、咳、発熱といった症状があらわれますので、そのような症状が発生した場合は特に注意するようにしましょう。
その他のエベロリムスの副作用としては、免疫力の低下にともなって、真菌や細菌、ウイルス等による感染症にかかりやすくなり、それが重症化することもあるので注意が必要です。
また、このような免疫力の低下にともなって、結核菌や肝炎ウイルス等の体内に潜んでいた菌が活性化するというケースもあるので、過去に結核や肝炎の既住歴のある方は特に注意するようにしましょう。
これらの副作用以外にも血液障害という白血球減少や血小板減少の症状が発症する副作用や、高血糖、糖尿病の発症等の様々な副作用があらわれる可能性があるため、治療中には決められた検査をきちんと受け、このような副作用に早期に対応していくことが重要となります。
また、日頃から体調の変化に気をつけるようにし、通常と違う症状があらわれたら、すぐに担当の医師に報告し、早急に適切な対応をとるようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬