パニツムマブ(ベクチビックス)とは?効果・副作用は?
パニツムマブは直腸がんと結腸がんの治療に用いられています。
パニツムマブ(ベクチビックス)とは、進行・再発の大腸がんを対象とした分子標的薬で、日本では2010年に承認された、比較的新しい薬となっています。
パニツムマブは武田薬品工業から商品名:ベクチビックスという名前で点滴薬として販売されており、点滴注射で投与されます。
パニツムマブは、「EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)」というがん細胞の増殖に関わる糖タンパクに対抗するために、人工的に作られた抗体であり、この「EGFR」は、特に大腸がんの増殖に大きな影響を与えています。
そのため、パニツムマブは直腸がんと結腸がんの治療に用いられています。
パニツムマブの効果・効能は?
大腸がんの増殖には、前述の通り、「EGFR」というタンパク質が関与していますが、「EGFR」は細胞の表面に並んでいて、細胞が増殖するスイッチの役割を担っています。
「EGFR」は正常な細胞においても存在しているのですが、がん細胞においては「EGFR」が非常に多く存在しているため、がん細胞の増殖を促進してしまいます。
そこで、細胞増殖のスイッチを入れさせないようにしようと開発されたのが、パニツムマブのような抗EGFR抗体薬です。
パニツムマブは、切除不能の再発・進行の大腸がんの患者に対しての1次治療として用いることができます。
ただ、日本国内においては、2次や3次治療としてパニツムマブが用いられることが多くなっています。
「EGFR」からはがん細胞を増殖させるシグナルが発せられていますが、そのシグナルが伝達していく過程において「KRAS」と呼ばれる遺伝子が関わっており、この「KRAS」遺伝子には「野生型」と「変異型」があります。
「野生型」は「正常型」であり、変異が無い型となっていて、日本人の約60%がこの「KRAS遺伝子野生型」であるといわれています。
パニツムマブを投与すると、「EGFR」の働きが抑えられ、がんの進行を抑えられたり、がん自体を小さくしたりする効果が期待できますが、この効果が発揮されるには条件があります。
それは、KRAS遺伝子に変異が無いという条件であり、もし、KRAS遺伝子に変異があると、このような効果は全く発揮されません。
つまり、パニツムマブはKRAS遺伝子が野生型である大腸がんの患者にだけ、効果が発揮されます。
ただ、正確にいうと、パニツムマブはKRAS遺伝子が野生型の患者に対して「効果が期待できる」もしくは「効く可能性がある」ということだそうです。
この効果が発揮される確率としては、パニツムマブをイリノテカンと併用で投与した場合において、がんが半分以下になる割合は約30%であり、がんの成長が止まる確率としては、前述の約30%+約50%だそうです。
したがって、パニツムマブのような抗EGFR抗体薬は、KRAS遺伝子が野生型であるがん患者に対して、約80%の確率でがんを抑制する効果を発揮することになります。
実際に、切除不能の進行・再発の大腸がんに対症療法のみを実施した場合と、対症療法にパニツムマブを投与した場合の比較臨床試験が行われました。
その結果によると、KRAS遺伝子が野生型の進行・再発の大腸がん患者のほうが、KRAS遺伝子が変異型の患者に比べて、生存期間の延長などがみられたという結果が出たそうです。
気になる副作用は?
パニツムマブの副作用としては、ニキビのような発疹やひび割れ、爪周囲編等の皮膚症状が多く現れます。
このような皮膚症状の副作用に対しては、紫外線からの防御やステロイドの外用薬、病院で指導されるスキンケア等によって対処するようになります。
また、パニツムマブの皮膚症状は毛穴が塞がれてしまうと、さらに症状が悪化してしまうため、常に皮膚を清潔に保つということも症状の改善のためには重要となります。
パニツムマブのその他の代表的な副作用としては「インフュージョンリアクション」という副作用があり、これは一種のアレルギー反応で、パニツムマブを投与した後にまもなく発熱や悪寒、吐き気等の症状が発生するものとなっています。
ただし、パニツムマブは、「ヒト化モノクローナル抗体」であり、抗体成分が100%ヒトに由来するものであることから、「インフュージョンリアクション」の症状は他の抗体薬と比較してやや軽減されるといわれています。
その他の副作用の症状としては、低マグネシウム血症や下痢等の症状が発生することもあります。
そのため、パニツムマブを使用した治療中には、担当の医師の指示に従って定期的な検査をきちんと受けるようにし、QOLを良好に保つようにすることが重要となります。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬