イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)とは?効果・副作用は?
骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬「イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)」
イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)とは、放射免疫治療薬であり、モノクローナル抗体を使用しています。
ゼヴァリンは商標名となっています。
イブリツモマブチウキセタンは、骨髄増殖性疾患やB細胞非ホジキンリンパ腫(リンパ系に作用し、転移あるいは抵抗・再発性で悪性が低いもの)の治療に用いられます。
このイブリツモマブチウキセタンという薬剤は、ハツカネズミのモノクローナルlgG1抗体イブリツモマブにキレート剤のチウキセタンを組み合わせたものです。
この後者には、イットリウム90またはインジウム111という放射性同位体が付加されています。
また、チウキセタンは、その炭素主鎖にメチル基とイソチオシアナトベンジル基が含まれており、DTPAに修飾を加えたものとなっています。
ゼヴァリンはリツキサンという分子標的治療薬の効果がない時に使用されます。
ゼヴァリンはリツキサンと同様に、B細胞表面上のCD20に対する抗体に放射性同位元素を結合させたものですが、悪性リンパ腫細胞の中には、細胞表面にCD20がないというものもあります。
リツキサンは、CD20陽性のリンパ腫細胞にしか効果がありません。
しかし、ゼヴァリンにおいては、放射性同位元素が放出するベーター線によって、CD20陽性リンパ腫細胞、さらにその周囲のCD20を持たないリンパ腫細胞まで攻撃することができます。
ただ、ゼヴァリンは骨髄抑制という、骨髄の中で正常な造血幹細胞に障害を発生させてしまう副作用があるため、リンパ腫細胞が骨髄内に浸潤している時などにおいては使用することが難しくなります。
ある臨床試験によると、濾胞性リンパ腫を発症していて、リツキサンに対する抵抗性がある患者54人に対して、ゼヴァリンを投与した場合に効果があった患者の割合は74%でした。
発生した副作用はいずれも骨髄抑制であったそうで、投与後約6〜7週間後に現れています。
ゼヴァリン投与時の注意点として、投与後3日間は比較的高い線量が存在します。
そのため、投与後3日間は家族、配偶者、子供への近距離での接触や長時間に渡る接触を避ける必要があり、特に子供への接触は1日30分程度にし、だっこしたり接触したりする時は、約10cmほどの間隔をあけるようにしなければいけません。
次に、着用した衣類等の洗濯は他の人と別にするようにし、もしシーツ類に血液や尿が付着した場合は、他の衣類とも別に洗濯して、十分にすすぐ必要があります。
また、トイレで尿や血液がこぼれた場合にはトイレットペーパーできれいに拭き取り、トイレに流すようにする、使用後のトイレの洗浄は2回行うようにするということも大切です。
さらに、その他の注意点として、十分な水分を摂取する、怪我をした場合は出血部分をきれいに拭き取る、できるだけ毎日シャワーを浴びる、性交渉を控えるということもあります。
現在、1回で投与される薬としては最も高価な薬となっています。
ゼヴァリンは、まだ特許の保護下にあるため、後発型のものはないことから、現在、1回で投与される薬としては最も高価な薬となっています
。この治療にかかる費用を健康保険を使用せずに全額自己負担で行ったとすると、総額約500万円前後が必要となるとされています。
ただ、他のモノクローナル抗体治療はさらに高額な治療費用となっているものもあるため、それらと比較すると、このゼヴァリンに設定されている価格はおおよそ中間帯の価格となっています。
日本で行われたゼヴァリンの治験においては、CHOP療法やリツキサン等の抗がん剤治療受けても再発してしまった低悪性度B細胞リンパ腫の患者や、これらの治療を受けても改善しなかった患者が対象となっていますが、そのなかで、たった1回の治療で約67.5%の患者が完全寛解に至るという結果が出ています。
したがって、ゼヴァリンの治療効果は高いと言うことができると思います。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬