タミバロテン(アムノレイク)とは?効果・副作用は?
急性前骨髄球性白血病の治療に使用されるタミバロテン(アムノレイク)
タミバロテン(アムノレイク)は、トレチノイン(ATRA)耐性急性前骨髄球性白血病(APL)に対する化学療法剤として用いられる経口剤であり、合成レチノイドで別名、レチノ安息香酸とも呼ばれています。
アムノレイクはタミバロテンの商品名で、日本でのみ承認されています。
タミバロテンは早期臨床試験においてATRAより良好な忍容性が示されており、その他にも、多発性骨髄腫、アルツハイマー型認知症、クローン病治療への応用が検討されています。
白血病では息切れや全身倦怠感等が発生し、感染症に罹りやすくなりますが、その白血病の中で病状の進行が速いもので、急性骨髄性白血病がよく知られています。
その進行性の白血病の1種として急性前骨髄球性白血病があり、タミバロテンはこの病気の治療に使用されています。
タミバロテン(アムノレイク)の効果効能は?
血液は骨髄で作られていますが、白血病においては骨髄に存在する細胞のがん化のよって血液の白血球が無秩序に増殖していきます。
この際、正常な白血球が増加するのであれば問題ないのですが、この際に増殖した白血球は正常な機能を持っていません。
また、がん化した白血病細胞が赤血球等の血球細胞が作られる代わりに生成されるため、貧血等の症状も発生することから、白血病の中でも急性前骨髄性白血病は治療が難しい病気とされてきました。
しかし現在においては、タミバロテンや全トランス型レチノイン酸が開発されたため、比較的治療成績が良い病気へと変わってきています。
通常、人間の体内の細胞において、細胞の組成が変化することはなく、例えば、肝臓の細胞が急に肺の細胞へと変化するということはありません。
しかし、例外的に骨髄の細胞だけは、1つの細胞が変化し、白血球になったり赤血球になったりするのですが、このように、ある特定の細胞が別の細胞へと変化し、機能の異なる物質へと変化することを分化と呼んでいます。
骨髄の細胞は、人間の他の器官の細胞とは別に、分化する機能を有しており、正常な白血球が生成されるには、骨髄細胞が分化して変化する必要があります。
しかし、急性前骨髄性白血病では正常な分化が行われず、分化が停止してしまうため、機能しない骨髄細胞のみが増殖してしまいます。
このような状態を改善するためには、骨髄の分化誘導に関わる物質を投与して、分化誘導を矯正的に行い、未成熟な細胞を正常細胞へと導く必要があります。
そのため、異常な白血病細胞を正常な細胞へ戻す働きを有するタミバロテンが投与されるのです。
ビタミンAはレチノイドとも呼ばれており、分化誘導の作用が知られていますが、タミバロテンはビタミンAが作用する受容体と同じ部位に作用することで、骨髄細胞の分化誘導を促進させます。
タミバロテンの臨床試験においては、約58%の患者を完全寛解まで導いたという結果も報告されています。
また、タミバロテンと同様なビタミンA製剤として全トランスレチノイン酸があり、この全トランスレチノイン酸の治療を行った後に再発した難治性の白血病に対してもタミバロテンは高い治療効果を発揮するとされています。
副作用はある??
タミバロテンの副作用としては、頭痛、発疹、口や唇の乾燥、肌荒れ、骨痛、発熱、中性脂肪の上昇、肝機能値の異常等、様々な副作用の症状が出るようですので、治療に入る前に医師から副作用についての説明を十分に受けるようにし、実際に発生したときに適切に対処できるようにしましょう。
タミバロテンの副作用でもっとも注意が必要なものが「レチノイン酸症候群」であり、これはビタミンA誘導体に特徴的に発生する副作用で、肺障害をはじめ、全身の臓器の機能障害が発生する副作用となっています。
その症状としては空咳、息切れ、発熱、息苦しさ等の症状が発生しますので、これらの症状に心当たりがあったらすぐに医師に相談しましょう。
その他のタミバロテンの副作用としては、白血球増多症、間質性肺炎が発生したという報告もあります。
このようにタミバロテンの投与時には、様々な副作用が発生しますので、何か普段とは違う症状等が発生した場合は、すぐに担当の医師に相談するようにしましょう。
また副作用の予防のために、治療中の検査はきちんと受けるようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬