アルコール・お酒、つまり飲酒とがんの関係はどうなっているのでしょうか。
厚生労働省は、健康全般についての疫学調査を行っていますが、1990年~2000年までの10年間に行われた、日本各地から抽出した箇所で14万人を対象としたコホート研究では、飲酒とがんの関係性を示す調査結果も含まれていました。
このコホート研究では、テーマを決めて、病気と発生要因の関連を一定期間追跡観察します。
そして、両群の発生率や死亡率を比較する手法で、この調査は70項目ほどにわたっていることから、その情報量はかなり豊富なものとなっています。
飲酒習慣がある人は脳卒中、高血圧、アルコール依存症、肝硬変などの重大な病気の原因となる
そして、この調査結果では「時々お酒を飲む人」(月に1~3日程度)を基準とすると、2日に1合程度以上の飲酒習慣がある人の死亡率は高くなり、その死亡率自体の上昇は高くないのですが、飲酒量が増加すると、それに伴って死亡率が上昇するという傾向もあります。
また、飲酒による影響によって発症するがんの種類としては、咽頭、喉頭、口腔、食道などの飲んだお酒が最初に通過する部位に発生するがんが増加するという結果が出ています。
また、胃から身体に吸収されたアルコールを分解する働きを持つ、肝臓に発生するがんも増加するという結果が出ました。
さらに、この今回のコホート研究調査結果によって、飲酒習慣がある人は脳卒中、高血圧、アルコール依存症、肝硬変などの重大な病気の原因となることが判明しました。
そのため、この調査結果を受けた結論として「お酒を毎日飲むなら量は1日平均で1合くらいまで、アルコール量で30mlまで」と提言しています。
飲酒によるがん発症には、アルコールとアセトアルデヒドが関係している
ところで、飲酒はどのようにしてがんを発症させるのでしょうか。
飲酒によるがん発症には、アルコールとアセトアルデヒドが関係しているといわれています。
まず、お酒に含まれるアルコール自体に発がん性があるとされています。
さらに、アセトアルデヒドはアルコール代謝産物ですが、2型アルデヒド脱水酵素の働きが弱い人(少量の飲酒で顔等が赤くなる体質の人)は、そのアセトアルデヒドが食道、咽頭、口腔のそれぞれのがん発症の原因となるといわれているのです。
また、乳がんに関しては、アルコールが体内のエストロゲンレベルを増加させることによって、がんが発症すると考えられています。
そのため、アルコールとホルモン、疾病の関係性が示唆されています。
実際、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)誌というイギリス医師会雑誌では、女性は1日に1杯のお酒を飲むだけでも乳がんのリスクが高まるという研究結果を発表しました。
ただ、体質によってお酒に対する耐性も変わるため、全ての人には当てはまらないようです。
そのため、どのくらいのお酒を飲むとがん発症のリスクが増加するのかという点については、現在でも研究は続いているとのことです。
また、アメリカの研究機関でも、男女別に同じアルコールを摂取した調査を行ったところ、女性だけ、主に乳がんのリスクが高まったという研究結果を発表しています。
その他、飲酒に喫煙が組み合わさった場合においての調査も行われています。
その調査では、非喫煙者では飲酒量が増えてもがんの死亡率の上昇は軽度であるのに対し、喫煙者では飲酒量が増えるとがん死亡率が確実に上昇しました。
これは、口腔~食道までのがんと肝臓がんといういわゆる飲酒関連がん以外のがんにおいても、その死亡率が喫煙者においては飲酒によって高くなるとのことです。
専門家は「アルコールを分解する酵素が、たばこの煙に含まれる発がん物質を活性化する作用があるのかもしれない」と推測していますが、はっきりとした理由やメカニズムは不明です。
これらの調査結果等により、飲酒ががんの原因となることは明白だと思います。
また、飲酒と喫煙ががんの死亡率を高めているのも事実だと考えられます。
飲酒・喫煙共になかなか止められないものかもしれませんので、リスクがあるということをきちんと理解したうえで、上手に付き合っていくようにしましょう。