世界の中でも日本人は、睡眠時間が特に短い国民であるとされています。
これは、海外で「日本人は寝る間も惜しんで真面目に働く」というイメージがついているほどであり、そのため、睡眠不足を特に大きな問題だと感じている人は少ないのではないでしょうか。
また、睡眠不足が実際に影響するのは、頭痛や集中力の低下くらいだろうと軽く考えている人も多いのではないかと思います。
しかし、実は睡眠不足はガンの原因となるといわれているのです。
まず、睡眠不足はそれ自体が強いストレスになります。
また、睡眠不足になると消化吸収の能力も落ちるとされています。
そうすると、下痢や便秘になりやすいため、腸の内部にいつまでも便がが溜まっていたり、逆に活発に動き過ぎることで腸内細菌が全部排出されてしまうという状態になることが考えられます。
このような状態になると、大腸がんの発症率があがるとされています。
また、睡眠不足によって自己免疫力が落ち、その影響によってガンを発症するということも考えられます。
ガンは高齢者がかかりやすい病気とされています。
これは、加齢によって自己免疫力が落ちてくるというのが、その理由となっています。
そもそも、ガンは細胞分裂の際の細胞のミスコピーが原因で発症するといわれており、健康な人であってもそのようなミスコピーの細胞は毎日数千もの数で生まれています。
ただ、免疫機能が正常であれば、そのようなミスコピー細胞は駆逐されます。
この免疫力が落ちてしまうと、一部のミスコピー細胞(ガン細胞)を殺すことができなくなるのですが、それでもアポトーシスにより多くのガン細胞は自然消滅します。しかし、その中でも生き残ってしまうガン細胞があり、それが増殖してガンとなってしまいます。
睡眠中に身体や脳はリラックス状態にあります。
その時、神経系は交感神経から副交感神経に切り替わっており、副交感神経が働いている時は、NK細胞やヘルパー細胞といった免疫細胞の働きが活発になります。
このように副交感神経が働いていて免疫細胞の働きが活発であれば、ガン細胞が見逃されることはありません。
また、睡眠不足になれば、交感神経が過度な緊張状態になっている時間が長くなってしまい、老化や遺伝子損傷の原因となる活性酸素の発生を促してしまいます。
このように睡眠には、交感神経と副交感神経を切り替え、自己免疫力を高め、活性酸素の発生を抑制するという重要な働きがあります。したがって、睡眠を十分にとることは、ガンの予防につながることになるのです。
その他、アメリカの研究者らは、夜間の睡眠時間および昼寝の時間と、大腸がん及びその他の原因による死亡との関係について調査しました。
その対象になった患者は、国の食事・健康調査に登録されている4869人の大腸がん(結腸・直腸がん)の患者であり、睡眠時間については自己申告してもらったとのことです。
この調査によると、1日7~8時間の睡眠をとっていた人と比較し、大腸がんを含めた全ての原因による死亡率が36%も高くなっていたという結果が出たそうです。
さらに、他の死亡率に影響を与える因子によって調節したデータでは、5時間未満という短時間睡眠の人は、大腸ガンによる死亡率が54%も上昇していたそうです。
このように、睡眠不足がガンの死亡率を高くする明確な原因については、まだ明らかになっていません。ただ、睡眠不足によってホルモンバランスの異常や代謝異常、炎症等が発生し、ガンを進行させるのではと考えられています。
睡眠不足を解消するためには、長い睡眠時間を確保するだけではなく、睡眠の質を良くすることも大切です。
ベストな睡眠時間は人によって違いますが、統計では6~8時間の睡眠が理想という人が多いそうです。
この時間を目安にして、自分に最適な睡眠時間を見つけてみましょう。