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胃壁全体が硬くなってしまう特殊な胃がんのことを「スキルス性胃がん」

普通の胃がんは、胃の壁にがん細胞ができてそこから胃全体に広がっていきますが、「スキルス性胃がん」の場合は、「スキルス」の「硬い」という意味の通り、胃の壁が硬くなります。
胃がんの大部分は腺がんという種類に分類されますが、その腺がんは分化型腺がんと印環細胞がんや低分化腺がん、粘液がん等の未分化型腺がんにさらに分けられます。

未分化型腺がんのうち、小さなびらんや陥凹等の、わずかな胃の壁の粘膜変化しか発生しない状態で、胃壁全体にがんが浸潤していて、胃壁全体が硬くなってしまう特殊な胃がんのことを「スキルス性胃がん」と呼んでいます。

「スキルス性胃がん」は、胃がん全体の約10%を占めており、がん細胞が胃粘膜の下に潜り込むように広がりながら増殖していくため、胃壁表面の病変が小さく、早期の発見が難しいことから、胃がんの中でも悪性度が高いとされています。

このように、がん細胞が胃粘膜の下にいるため、胃壁表面の粘膜を採取して顕微鏡で観察しても、がん細胞が見つからないことがあり、X線や内視鏡検査による胃壁表面の形状観察では、正常の胃との区別がつきにくいというのも「スキルス性胃がん」の特徴となっています。

また、「スキルス性胃がん」の治療の難しい点として、他の胃がんと比較して進行が速く、肉眼的分類ではステージ4型と定義されている胃がんにほぼ相当する腹膜転移等の遠隔転移が、がん診断時の約半数の患者に発生するという点です。

その進行スピードの速さの例としては、一般的な胃がんが数年から10年かけて発見できるくらいの大きさ(1センチ程度)になるのに対し、「スキルス性胃がん」では、前年の検診では異常がなかったのに、翌年にはがんが進行して発見されたというケースもあります。



さらに、「スキルス性胃がん」では、「腹膜播種」という特徴的な転移が高い割合で発生します。

通常、がんの転移はリンパ液や血液の流れにのって他の臓器に広がっていきます。
しかし、「腹膜播種」では、がん細胞が胃壁の外側に突き進んで、お腹の中にこぼれ落ち、腹腔内の臓器を覆っている腹膜にくっついて散らばっていってしまいます。

このような「腹膜播種」があると、腹膜に炎症を起こしてしまい、腹水がたまったり、腸閉塞が発生したりするようになり、がんの発見やその治療を難しいものにしてしまいます。

「スキルス性胃がん」の標準的な治療方法は?

このような特徴をもつ「スキルス性胃がん」の治療では、標準的な治療方法がまだ確立されていないため、胃がんの治療のガイドラインに準じることが多くなっています。

進行した胃がんでは、胃切除と2群までのリンパ節郭清が標準的手術とされていますが、「スキルス性胃がん」においても基本的に手術が第1選択となっています。
「スキルス性胃がん」の手術は、前述した「腹膜播種」が発生しているかどうかが大きなポイントとなります。

「腹膜播種」が発生していると、お腹の中の広い範囲に小さな転移がたくさん発生している状態となってしまうため、手術を行うことができなくなってしまいます。
もし、「腹膜播種」が発生していなければ、手術の術式は胃切除(胃全摘術が多い)および2群までのリンパ節郭清という、胃がんの標準的手術が行われ、手術後には補助的に化学療法を行うのが、現時点での最良の治療法とされています。

ただ、「スキルス性胃がん」においては、手術可能と診断されて、手術を実施しても、がんを完全に取りきれたと考えられるケースは、全体の約半分程度となっています。

「スキルス性胃がん」はその進行速度の速さから、手術前に判断していた病期よりも、実際には進んでいて、予定していた手術の術式を変更せざるをえないというケースが多いというのもその理由の1つとなっています。

「スキルス性胃がん」の手術費用は・・・

このような「スキルス性胃がん」の手術費用ですが、胃がんの定型手術および入院とほぼ同じと考えると、入院期間を約17日として、約127万円ほどかかると思われます。

ただ、このような手術費用には高額療養費制度が利用できますので、自己負担額は約10万円ほどで済むと思われます。

「スキルス性胃がん」は手術を行っても、術後の5年生存率が約10~20%という非常に予後の悪いがんです。
ただ、最近は分子標的治療薬の臨床試験が進んだり、新薬候補となる物質が見出されたりしているため、昔ほど手の施しようがないという状況ではなくなってきています。

「スキルス性胃がん」の治療方法の研究が進み、標準的な治療法の確立が今後さらに進むことが期待されます。




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