エトポシド(ベプシド、ラステッド)とは?効果・副作用は?
北アメリカのメギ科の植物の根から抽出したエトポシド(ベプシド、ラステッド)
エトポシド(ベプシド、ラステッド)とは、1966年に合成された抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)であり、北アメリカのメギ科の植物の根から抽出した成分結晶性成分であるポドフィロトキシンを原料としています。
エトポシド(ベプシド、ラステッド)は、トポイソメラーゼ阻害薬に分類される抗がん剤の一種であり、ラステットは日本化薬から販売されている際の商品名、べプシドはブリストル・マイヤーズから販売されている際の商品名です。
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返して、正常細胞の中へ入っていったり、転移を行ったりする性質がありますが、その一方で正常細胞はがん細胞のように活発な増殖を行いません。
抗がん剤は、このようながん細胞と正常細胞の細胞分裂のスピードの違いを見極め、細胞分裂のスピードが速い細胞に対して毒性を示すという考え方で作られています。
エトポシド(ベプシド、ラステッド)の効果効能は?
細胞分裂には、生命情報が書かれているDNAの複製が必須であるため、DNA合成が阻害されれば細胞増殖はストップします。
そのため、抗がん剤はこのDNA合成を阻害するような働きを示します。
DNA合成時には、DNAの二本鎖のらせん構造を、生命情報を読み解くために一本鎖の形状にほどく必要がありますが、これはDNAの鎖を一旦切断し、ねじれを解消します。
トポイソメラーゼⅡは、このDNA鎖を切断する働きを持っている酵素となっています。
そのため、このトポイソメラーゼⅡの働きを阻害すれば、DNA鎖を切断できなくなり、DNAのらせん構造をほどくことができず、細胞分裂をストップすることができます。エトポシドはこのような作用によってDNA合成を阻害し、抗がん作用を示します。
エトポシドは小細胞肺がん、悪性リンパ腫等の治療に使用されています。
エトポシドは、小細胞肺がんの化学療法ではPE療法(シスプラチンとの併用)で、精巣腫瘍の治療ではBEP療法(シスプラチンとブレオマイシンの併用)において使用されることが多くなっています。
その他のエトポシドの代表的な治療法として、非小細胞がんと悪性胸膜中皮腫にCDDP+MTA療法(シスプラチン+ペメトレキセドナトリウム)がありますが、重い副作用の発生を軽減するために、ビタミンB12と葉酸を投与する必要があります。
エトポシドは外国での臨床試験において、非小細胞肺がん全体で、ペメトレキセドとシスプラチンとの併用治療と、ゲムシタビンとシスプラチンとの併用治療の結果比較が行われましたが、その結果に差はみられませんでした。
ただ、非小細胞肺がんの組織型別の生存期間を比較したところ、非小細胞肺がんの中の非扁平上皮がんにおいて、ペメトレキセドとシスプラチンとの併用治療の方が生存期間が延長されたという結果も報告されています。
エトポシドの代表的な副作用は?
エトポシドの代表的な副作用としては骨髄抑制の症状があり、特にエトポシドの投与から2週間後がもっとも白血球や好中球の数値が減少する時期とされています。
そのため、その時期には感染症に十分に注意する必要があります。
また、患者の体質によっては、エトポシドの投与によってアレルギー反応が発生する場合があります。
症状が重篤な場合、アナフィラキシーショックや、指の爪、粘膜が青紫色になるチアノーゼ、呼吸困難、血圧低下等の症状が発生するケースもありますので、十分に注意するようにしましょう。
その他の副作用の症状としては嘔吐、吐き気が発生することもあり、その発生リスクは中等度に分類されています。
また、脱毛の症状が発生することもあり、さらに、間質性肺炎の発症リスクもあります。
そして、エトポシドの投与によって、稀ではありますが、二次性の急性白血病が発症することもあります。
この場合は、予後が極めて不良であるとされていますので、エトポシド投与後の経過確認は極めて慎重に行う必要があります。
【まとめ】植物アルカロイド一覧
■パクリタキセル注射剤(アブラキサン)
>>様々ながんの治療に用いられている抗がん剤の1つ
■ビンブラスチン(エクザール)
>>微小管阻害薬に分類されている抗がん剤の1つ
■ビンデシン(フィルデシン)
>>細胞分裂において重要な役割を果たしている微小管の働きを阻害する抗がん剤
■ビンクリスチン(オンコビン)
>>多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫等の血液の悪性腫瘍の治療に用いられる植物アルカロイド
■ビノレルビン(ナベルビン)
>>手術不能もしくは再発してしまった乳がんに対しても用いられる植物アルカロイド
■パクリタキセル(タキソール)
>>イチイ科の植物から抽出された成分を使って作られた抗がん剤
■ドセタキセル(タキソテール)
>>パクリタキセルと名称が似ていて、作用機序も同様だが抗腫瘍効果も高い場合も。
■ノギテカン(ハイカムチン)
>>小細胞肺がんや、がん化学療法後に悪化した卵巣がんの治療に使用される抗がん剤
■ソブゾキサン(ペラゾリン)
>>成人T細胞白血病リンパ腫や悪性リンパ腫の治療に使用される抗がん剤
■エリブリン(ハラヴェン)
>>再発または手術不能の乳がんに使用される抗がん剤
■エトポシド(ベプシド、ラステッド)
>>北アメリカのメギ科の植物の根から抽出した抗がん剤
■イリノテカン(カンプト、トポテシン)
>>卵巣がん、子宮がん、乳がんや進行再発胃がん、また、肺がんや大腸がん等の幅広いがんに適用される抗がん剤