ダサチニブ(スプリセル)とは?効果・副作用は?
複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害するダサチニブ(スプリセル)
ダサチニブ(スプリセル)とは、分子標的薬で、BCR-ABLをはじめとした複数のチロシンキナーゼを標的としており、チロシンキナーゼ阻害薬でもあります。
ダサニチブはブリストル・マイヤーズ株式会社で製造・販売を行っており、スプリセルがその商品名で、大塚製薬がプロモーション提携しています。
ダサチニブは、複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。
ダサチニブは、難治性または再発のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病と、慢性骨髄性白血病(CML)に対する治療薬として承認されています。
ダサチニブ(スプリセル)の効果効能は?
フィラデルフィア染色体は、異常タンパクであるBcr-Ablを生成し、ABLチロシンキナーゼの異常活性化を引き起こします。
その影響によって、細胞増殖の促進、アポトーシス(細胞自死)の減少といった、がんの性質の症状を発生させます。
ダサチニブは、このBcr-Ablチロシンキナーゼだけではなく、SRCファミリーキナーゼ、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体およびPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体に対するATP(アデノシン三リン酸)の結合をも阻害します。
ダサチニブは、このような様々な阻害の働きを持ち、それによって抗腫瘍効果を発揮します。
これらの多くの種類の標的に対して、ダサチニブは阻害する働きを持っていることから、イマチニブ等の他の抗がん剤が効果を発揮できなくなった場合においても、治療効果が有効となることがあると考えられています。
ダサチニブは、海外において、非臨床試験が1998年から開始され、臨床第1相試験が2003年11月から開始されました。
米国においては2005年12月に承認申請が行われ、FDAより迅速承認を受けました。
その結果、ダサチニブは2006年6月、イマチニブを含む既存の治療に不耐容または抵抗性のCML、もしくは既存の治療に不耐容または抵抗性のPh+ALLを効能・効果として承認されました。
EUでは2006年11月に、米国と同様の用法・用量および効能・効果で、希少疾病用医薬品として指定されつつ、承認されました。
日本においてダサチニブは、国内臨床第1/2相試験という安全性、有効性および薬物動態を評価する試験が、2005年7月より開始され、この試験は2007年3月に終了しました。
その後、長期に渡って投与された場合の安全性を検討する継続投与試験に移行し、慢性期CMLに対する海外臨床第3相試験の結果も踏まえ、2007年5月には慢性期CMLを対象とした臨床第2相試験が開始されました。
2007年8月には、日本国内および海外臨床試験の成績に基づいて承認申請が行われ、その前の2007年3月には、海外と同じく希少疾病用医薬品として指定されています。
そして、ダサチニブは2009年1月、イマニチブ抵抗性があり、慢性期、急性期および移行期であるCML、若しくは再発または難治性のPh+ALLを効能・効果として承認されました。
ダサチニブは、ABL以外のキナーゼ活性を阻害する作用もあります。
そのため、ダサチニブの治療標的以外のキナーゼ活性を抑制してしまうことで引き起こされる効果(オフターゲット効果)による副作用が発生することがあり、ダサチニブの主な副作用の1つである胸水貯留等の体液貯留の症状は、PDGFRβキナーゼ阻害による前述のオフターゲット効果によって発生していると考えられています。
また、血小板減少等の症状は、ダサチニブを投与した患者の約50%に発生するといわれています。
その症状の発生頻度は、急性期・移行期となった慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性(Ph+ALL)の患者において高くなっているとされており、このような血小板減少の影響によるものと思われる脳出血や消化管出血等の症状が多く報告されています。
その他の重い副作用としては、QT延長症候群、腫瘍崩壊症候群、感染症、骨髄抑制、間質性肺疾患、心不全、急性腎不全、心筋梗塞、肺静脈性肺高血圧症等の症例が報告されています。
ダサチニブの副作用で特徴的である胸水は、ダサチニブでの治療時の様々な時期に発生するため、ダサチニブの投与中は常に注意をしておく必要があります。
もし、呼吸困難や胸痛、空咳等の胸水が疑われるような症状が発生した場合は、速やかに担当の医師に報告してください。
胸水の症状が重い時は、ダサチニブの投与を一次中止する場合もありますので、医師の指示に従うようにしましょう。
【まとめ】分子標的薬一覧
■リツキシマブ(リツキサン)
>>世界でベストセラーの抗がん剤
■トラスツズマブ(ハーセプチン)
>>HER2蛋白に特異的に結合する事で抗腫瘍効果を発揮
■タミバロテン(アムノレイク)
>>耐性急性前骨髄球性白血病に用いられる経口剤
■ダサチニブ(スプリセル)
>>複数の細胞増殖に関係する酵素の働きを阻害する
■トレチノイン(ベサノイド)
>>人間の体内に入ると細胞の遺伝子核に入り込む
■セツキシマブ(アービタックス)
>>転移性大腸がん、EGFRの発現を伴わない頭頸部がんの治療
■ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
>>抗体薬物複合体の1つで、主に急性骨髄性白血病の治療に使用
■ゲフィチニブ(イレッサ)
>>手術不能となってしまった非小細胞肺がんに対する治療薬
■イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)
>>骨髄増殖性疾患等に使われる分子標的薬
■ソラフェニブ(ネクサバール)
>>腎がん・肝細胞がんの治療に用いられる分子標的薬
■エルロチニブ(タルセバ)
>>膵臓がんもしくは、切除不能又は再発した非小細胞肺がんに用いる分子標的薬
■ボルテゾミブ(ベルケイド)
>>形質細胞性骨髄腫や多発性骨髄腫の治療に使用される分子標的薬
■イマチニブ(グリベック)
>>Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬
■エベロリムス(アフィニトール)
>>免疫抑制剤としての使用及び、腎細胞がん治療薬としても有用な分子標的薬
■ラパチニブ(タイケルブ)
>>手術不能乳がんまたは再発乳がんに対し使用される分子標的薬