腎細胞がん

発生率は女性の2~3倍といわれる腎細胞癌(がん)

腎臓は長さ約10cm、幅約5cm、厚さ約3cm程度の大きさのソラマメのような形をした臓器であり、みぞおちの高さくらいの背中側に背骨を挟んで、左右一対ある臓器です。
この腎臓は体内の有害物質や老廃物を排泄し、尿を作り出す役割を持っていますが、そんな重要な役割を持っている臓器に発生する癌が「腎臓癌」です。

男性に多く発生する癌であり、その発生率は女性の2~3倍といわれています。

「腎臓癌」の種類には、主に「腎細胞癌」と「腎盂癌」がありますが、「腎臓癌」全体の中の約90%が「腎細胞癌」となっています。
「腎細胞癌」は、尿細管の細胞が癌化したもので、泌尿器科系悪性腫瘍の中では、前立腺癌、膀胱癌に次いで多い癌となっています。

癌の進行が遅いタイプだが、その一方で、進行が速く、急速に悪化するタイプも

「腎細胞癌」で多いのはゆっくりと大きくなる、癌の進行が遅いタイプですが、その一方で、進行が速く、急速に悪化するタイプもみられます。
静脈の中に腫瘍が広がってしまう、腫瘍塞栓の傾向が強いため、他の臓器へ転移しやすく、肺、骨、リンパ節、肝臓、脳等の幅広い臓器への転移のケースがみられます。

放射線治療、抗がん剤治療等の化学療法が効きにくいという特徴があるため、インターロイキン2、インターフェロン等を用いた免疫治療が、治療の中心となります。



「腎細胞癌」は、初期段階ではほとんど無症状

初期段階ではほとんど無症状なため、中々気がつきにくいのが腎細胞がんの特徴です。

このため、早期発見される「腎細胞癌」はほかの病気の精密検査や検診等で偶然見つかるというケースがほとんどとなっています。

以前は「腎細胞癌」の3大症状として、腫瘤触知・血尿・疼痛が知られていましたが、現在はこのような自覚症状によって癌が発見されるケースは全体の約10%程度であるようです。

癌が進行し、全身に広がっていくと、発熱、貧血、体重減少、食欲不振等の全身症状が現れ、また、「腎細胞癌」には造血作用のある物質を作り出してしまうという性質があるため、高血圧や高カルシウム血症、赤血球増多症というような症状が現れることもあります。

「腎細胞癌」の5年生存率はステージⅠで・・・比較的高い生存率

「腎細胞癌」の5年生存率はステージⅠで92%、ステージⅡで78%、ステージⅢで53%、ステージⅣで32%となっています。
(癌研有明病院、1981~2007年までのデータ)他の癌と比較すると、比較的高い生存率である数値もありますが、「腎細胞癌」は放射線や抗がん剤が効きにくい癌のため、転移が広がり、手術で全ての癌を取りきれないケースにおいては、予後は厳しくなります。

また、「腎細胞癌」は最初の治療から5、10年後においても再発する可能性のある癌だといわれています。

化学療法が効きにくいという性質から、手術が第一選択

「腎細胞癌」の治療法は、前述の通り、放射線治療、抗がん剤治療等の化学療法が効きにくいという性質から、手術が第一選択となり、これにより腫瘍が摘出できれば治癒も期待できます。
「腎細胞癌」の一般的な手術法としては、根治的腎摘除術という、副腎や周囲の脂肪組織も含めた状態で、Gerota筋膜ごと腎を摘出する方法があり、以前は直接腹部を切って腎臓を摘除していましたが、近年では内視鏡を用いた手術も行なわれているようです。

免疫療法の他に、分子標的薬が用いられることも。

また、腎臓は左右に2つあることから、手術を行った後に、残存している反対側の腎臓機能が正常な状態であれば、腎不全に陥ってしまうこともないので、手術後に生活の制限を受けることもほとんどありません。

その他、前述した免疫療法の他に、分子標的薬という治療もあります。

これは、免疫療法の効果が無く、切除手術が困難で、さらに転移もおきているケースに行われる治療で、海外では転移のあるケースの第一選択薬とされているところもあるようです。
今後、更に開発が進み、使用できる薬が増えていくことが期待されている治療法です。

>>参考:分子標的薬とは?分類や副作用は?【抗がん剤の種類】

「腎細胞癌」の発生にはVHL遺伝子の変異が深く関わっていることが、最近の研究でわかってきています。

VHL遺伝子の変異によって細胞増殖や血管新生が引き起こされてしまうため、それを防ぐための薬剤として、前述の分子標的薬が生まれたという経緯があります。

また、アジアより欧米での「腎細胞癌」の発症リスクが高いことから、喫煙、肥満、高血圧等の欧米食による、欧米型の生活が「腎細胞癌」の発症リスクを高めているといわれています。
自分自身の生活習慣や食生活を見直すことが、そのまま「腎細胞癌」の予防につながるといえると思います。




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