肝臓癌(がん)とは?特徴や症状は?発生要因がはっきりしている癌。
「沈黙の臓器」である肝臓に発生する癌
肝臓は、約3000億個以上の肝細胞が集まってできており、成人なら800~1200gほどの大きさのある、人間の体内の中で最大の臓器です。
このように大きな肝臓なのですが、「肝臓癌」等のいろいろな肝臓の病気において、その症状が現れにくいため、「沈黙の臓器」と呼ばれています。
「転移性肝癌」「原発性肝癌」の2種類
「肝臓癌」は別の臓器から転移してきた「転移性肝癌」と、肝臓に直接発生した「原発性肝癌」の2種類に大きく分けられます。
「原発性肝癌」には「肝細胞癌」(肝臓の細胞が癌になってしまう)と「胆管細胞がん」(胆汁を十二指腸に流している胆管の細胞が癌になってしまう)という種類があります。
また、その他のごくまれな癌の種類としては、未分化癌、胆管嚢胞腺癌、神経内分泌腫瘍、成人での肝細胞・胆管細胞混合癌、肝細胞芽腫(小児の肝癌)等の種類があります。
この中で日本で発生している「肝臓癌」は「肝細胞癌」が全体の約90%と、そのほとんど占めているような状況です。
原因は肝炎ウイルスの持続感染
「肝臓癌」の主な原因は肝炎ウイルスの持続感染であり、癌の中では珍しく、主要な発生要因がはっきりしている癌の一つとなっています。
肝細胞において、肝炎ウイルスの持続感染による再生と炎症が繰り返され、その際に遺伝子の突然変異が蓄積し、「肝臓癌」へと進行させてしまっていると考えられています。
肝炎ウイルスは、A、B、C、D、E等のいろいろな種類が存在していますが、「肝臓癌」と関連しているのはBとCの2つのみとされています。
このB型、C型肝炎ウイルスに感染してしまうと、B型肝炎においては約10%、C型肝炎においては約70%の確率で慢性肝炎に至ってしまい、それによる炎症の影響で肝臓の繊維化が進行してしまい、肝硬変や「肝臓癌」になりやすい状態になってしまいます。
体がだるくなるといった軽い初期症状が見られる場合も
「肝臓癌」の初期の自覚症状はほとんどありませんが、強いて言えば、栄養代謝能力が低下するため疲れやすくなる、体がだるくなるといった軽い症状が見られる場合もあるようです。
そのため、他の病気の検査や定期検診等で、偶然「肝臓癌」が見つかるというケースが多くなっています。
癌がある程度進行していくと、腹部のしこりや圧迫感、痛み、原因のわからない微熱や貧血、食欲不振や体重の減少、全身の倦怠感等の症状が現れてきます。
また、さらに癌が進行すると意識障害や吐血や下血といった症状も現れてきますが、これらは全て肝硬変と同じ症状であり、「肝臓癌」特有の症状というものはあまりありません。
「肝臓癌」の5年生存率は
「肝臓癌」の5年生存率はステージⅠでは約50%程度ですが、ステージⅢになると約20%と大きく下がり、ステージⅣでは10%を切ってしまっている状況で、「肝臓癌」の全てのステージでの5年生存率は、他の全種類の癌の5年生存率の平均よりも全てのステージで下回ってしまっています。
前述した通り、「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階での自覚症状がほとんどないので、ある程度まで癌が進行してしまってから発見されるケースが多いということが、この結果に現れていると考えられます。
「肝臓癌」の治療法としては、外科的治療と薬物治療がめいん
外科的治療は手術によって癌を切除するため根治治療として優れていますが、この手術を行うためにはいろいろな制限があります。
その制限とは、高齢でない、肝硬変が悪化していない、他の臓器への転移が認められない等です。
薬物治療では抗がん剤を用いますが、副作用を防ぐため、癌の患部のみに抗がん剤を直接投与するという方法もとられているようです。
また、肝細胞はエタノールに弱いという性質を利用して、高純度のエタノールを癌細胞に直接注入する、エタノール注入治療というものもあります。
「肝臓癌」の肝炎ウイルス以外の発生リスクの要因としては、喫煙や大量の飲酒、さらにアフラトキシンという、食事に混入してしまうカビ毒が確実に影響するとされています。
予防には日々の生活習慣や食生活の見直しが重要
その他、糖尿病等の生活習慣病との関連性も疑われていることから、日々の生活習慣や食生活の見直しが重要だと言えます。
また、「肝臓癌」には初期症状がほとんどないことから、健康診断等で肝機能異常を指摘された場合には、一度肝臓の専門医を受診することがおすすめです。