食道がんの手術費用、時間、入院期間は?
日本人に発生する食道がんの約95%以上は「扁平上皮がん」
「食道がん」は胃とのど(咽頭)の間をつなぐ管状の臓器である食道に発生するがんで、食道内面をおおっている粘膜上皮から発生します。
食道のほとんどは扁平上皮で構成されており、日本人に発生する食道がんの約95%以上はこの部分に発生する「扁平上皮がん」が占めていますが、欧米では、胃がんと同様に腺上皮から発生する「腺がん」が約50%以上と半数以上を占めており、現在も増加傾向にあります。
近年、日本人の生活習慣や食生活が欧米化してきている影響から、今後は日本でも「腺がん」が増加してくることが予想されます。
「扁平上皮がん」と「腺がん」では、がん自体の性格が異なり、その手術成績等も異なってくるため、資料等を参考にする場合は注意するようにしましょう。
早期の「食道がん」の治療においては、「内視鏡療法」が行われます。
「内視鏡療法」は、内視鏡を用いて食道の内側からがんを切り取る治療であり、リンパ節転移がなく、がんがまだ粘膜にとどまっている状態で、がんの広さが縦横2cmくらいまでのがんに適応となります。
手術時間は約1時間、入院日数も約1週間程度であり、食事も翌日から可能です。
ただ、「内視鏡療法」によって切除した組織を顕微鏡で観察した際に、がんが深く浸潤している状況が確認されたり、血管やリンパ管へがんがおよんでいることが確認された場合には、がん細胞が食道の外のリンパ節等まで広がってしまっている可能性が考えられるため、外科手術や放射線療法、抗がん剤治療等が追加されます。
「内視鏡療法」(内視鏡的粘膜切除術)の手術費用は約16万円となっています。
粘膜を越えてしまっている場合に外科手術の場合も
「食道がん」が粘膜を越えてしまっている場合に外科手術が検討されますが、食道は呼吸器等の重要な臓器に囲まれているので、手術は大がかりになることが多くなっています。
また、「食道がん」の手術は、その発生部位の違いによって、それぞれ手術方式が変わってきます。
食道の上部の位置に発生する「頸部食道がん」の場合、腫瘍がまだ小さいケースでは周りのリンパ節と頸部食道のみを切除し、その代替えとして、小腸の一部によって管を再建する方式がとられます。
ただ、がんが食道の下部まで広がってしまっている場合は「咽頭」や「咽喉」も切除することになるため、術後は発声ができなくなったり、咽頭切除によって自然な呼吸が困難になるので、その際は永久気管孔という孔を喉に開けて、そこから呼吸するようになります。
非常に大がかりな手術になる場合も
食道の中央部分で発生する「胸部食道がん」の手術は、肋骨を切り離して胸を開き、肺や心臓、大動脈等の重要な臓器を傷つけないように細心の注意を払いながら胸部食道を全摘出し、周辺リンパ節も切除するという、非常に大がかりな手術となります。
切除後は、食物が通るための新たな経路を再建するため、胃を上のほうに押し上げて残りの食道とつなぎます。
「腹部食道がん」の場合は
食道の胃に近い下部に発生する「腹部食道がん」では、腹部食道と胃の入り口部分等を切除し、周辺のリンパ節を郭清した後、残った食道と胃をつなぐバイパス手術が行われます。
「腹部食道がん」の手術は他の2つの手術方法と比較すると、手術の規模はやや小さいものとなります。
高額療養費制度はあくまでひと月の医療費なので要注意
このような「食道がん」の外科手術では、身体を切開し、食道を摘出したり再建したりするため、手術費用や入院期間が大幅に増え、手術費用は約100万円程度かかり、多くのケースで1ヵ月以上の入院が必要となります。
ただし、日本には高額療養費制度があり、ひと月の医療費が上限を超えた場合、その越えた分においては免除されますので、実際に医療機関の窓口等で支払う金額が10万円を超えることはほとんどないと思われます。
それでも、高額療養費制度はあくまでひと月の医療費ごとに計算されるため、入院が月をまたいだ場合には、それぞれ別の月の医療費として計算されるため、制度をあてにしすぎると、思っていたより医療費が高額になってしまうということもありえます。
不安な方は、がん保険等にあらかじめ加入しておくということも検討してみましょう。