アスベスト(石綿)とは?【癌の原因:発がん性化学物質】
肺ガン、悪性中皮腫の誘因となることが指摘されるアスベスト(石綿)
アスベスト(石綿)とは、無機繊維状鉱物の総称であり、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の鉱石です。
アスベストは、大きく分類するとクリソタイルなどの蛇紋石系と、クロシドライト、アモサイトなどの角閃石系に分けられます。
アスベストの繊維1本の直径は、髪の毛の約5000分の1程度である0.02~0.35μmしかありませんが、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れていました。
また、安価でもあったため「奇跡の鉱物」として、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されて重宝されてきました。
しかし、その後、空中に飛散したアスベストの繊維を長期間にわたって大量に吸入すると、肺ガン、悪性中皮腫の誘因となることが指摘されるようになりました。
そのため、アスベストは「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになってしまったのです。
飛散すると空気中に浮遊しやすくなっているアスベスト
アスベストは前述の通り、肉眼では見ることのできない極めて細い繊維でできていますので、飛散すると空気中に浮遊しやすくなっています。
そして、人間がそのアスベストを吸入すると、肺胞に沈着しやすいという特徴があり、吸い込んだアスベストの一部は異物として痰の中に混ざり体外へ排出されます。
しかし、アスベストの繊維は丈夫で変化しにくいという性質を持っています。
そのため、肺胞に沈着したアスベストの繊維は、肺の組織内に長く滞留することになります。
前述の肺ガンや悪性中皮腫、また肺の線維化は、このような体内に長く滞留したアスベストが要因となって引き起こされるのです。
また、肺内に滞留したアスベストの繊維は、マクロファージという白血球の一種が排除しようとするのですが、細くて長いアスベストの繊維は排除されにくいとされています。
またアスベストの繊維の有害性は、細くて長いものほど高くなるので、この排除されずに残ってしまった、細くて長いアスベストの繊維のよって前述のような病気が発症するとも考えられています。
また、アスベストの発ガン性は、そのアスベストの種類によっても異なるとされています。
そのため、クロシドライト、アモサイトなどの角閃石系のアスベストの方が、クリソタイルなどの蛇紋石系のアスベストよりも発ガン性が高いとされています。
ただ、アスベストによる前述の肺ガンや悪性中皮腫の発症の相関関係は確認されているのですが、どの程度以上のアスベストを吸い込めば発症するかということはわかっておりません。
そのため、発ガン性が高いという角閃石系のアスベストにおいても、どのくらいの期間吸い込めば前述の肺ガンや悪性中皮腫などの病気を発症するかということはわからないのです。
ただ、アスベスト健康被害によるものといわれている悪性中皮腫の患者は、年々増加しているそうです。
厚生労働省の人口動態統計によると、1960年代の石綿輸入量の増加した時期に、平均約40年といわれるアスベストの潜伏期間を加えた時期にあたる、2000年代において急増してきているようです。
実際、悪性中皮腫で2005年に亡くなった方は911名であり、これは1995年の倍近くという数字です。
このように、悪性中皮腫などの低濃度のアスベストの吸入によって発症する疾病は、30~50年という長い潜伏期間を経て発症するため、早期発見・治療には、アスベストによる自覚症状があるかどうかをチェックすることが重要となります。
アスベストを吸い込んだ心当たりのある方で、胸痛、呼吸困難、咳などの自覚症状がある方は、専門の医療機関を受診してみることをおすすめします。