フルオロウラシルとは?効果・副作用は?
5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボンの効果・副作用は?
フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)とは、抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)であり、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤です。
フルオロウラシルはウラシルの5位水素原子がフッ素原子に置き換わった構造をしており、1956年にDushinskyらによって合成されました。
その後、基礎および臨床にわたる広範囲な研究がHeidelbergerらを中心として行われて、フルオロウラシルは抗がん剤としての評価が確立されました。
フルオロウラシルは、日本国内においては協和発酵キリン株式会社から注射薬として販売されており、5-FUはその商品名です。
フルオロウラシルの効果・効能は?
フルオロウラシルは、40年以上も前に開発された、比較的古い抗がん剤となっています。
しかし、多くの抗がん剤が開発された現在においても、主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たしています。
また近年では、フルオロウラシルを元に作用増強と副作用軽減を目的に開発されたプロドラッグの新薬である、テガフール・ウラシル配合剤(ユーエフティ)、カペシタビン(ゼローダ)、テガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤(ティーエスワン)等が出てきています。
これらの新薬は体内で徐々にフルオロウラシルに変換されて、その治療効果を発揮していきます。
人間の体内のDNAを構成する塩基には、プリン塩基(アデニン・グアニン)、ピリミジン塩基(チミン・シトシン・ウラシル)があり、そして、この中のウラシルの一部に対してフッ素を結合させて、人工的に生成したピリミジン塩基がフルオロウラシルとなります。
フルオロウラシルを人間の体内に投与すると、正常な塩基と間違われ、そのまま体内に取り込まれるようになります。
これにより、細胞のコピーができなくなってしまうため、その結果、がん細胞が自死に追い込まれることとなります。
フルオロウラシルは大腸がん以外にも乳がんや食道がん、頭頸部がん等の治療に活用されています。
これらの病気の治療時には他の薬との併用治療によって投与される場合が多くなっており、大腸がんにおいては、FOLFOX療法(フォリン酸とオキサリプラチンとの併用)、FOLFIRI療法(フォリン酸とイリノテカンとの併用)等の治療法が多く行われています。
これらの治療法は、特に転移進行性の大腸がんにおいては、その治療の第一選択となっています。
その他、FOLFOX4、mFOLFOX6など、各薬剤の投与方法や投与量を変えたものによる、フルオロウラシルと他の薬剤の様々な組み合わせのレジメンが研究されています。
また、FOLFOX療法やFOLFIRI療法に、がん細胞の増殖や転移に関係する特定の分子やタンパク質などを標的にして攻撃する分子標的薬を併用するという治療法もあります。
このように現在では、新型の抗がん剤の開発のほかに、フルオロウラシルのように有効性が確立されている抗がん剤に、いろいろな抗がん剤や新しいタイプの薬を組み合わせる研究も進んでいます。
フルオロウラシルの代表的な副作用は?
フルオロウラシルの代表的な副作用としては骨髄抑制があり、フルオロウラシルの投与方法には、24時間以上という時間をかけて投与する点滴静注と急速静注という投与方法があるのですが、この中で急速静注の方が骨髄抑制の症状が発生しやすくなっています。
また、フルオロウラシルの副作用の症状には、下痢、口や鼻などの粘膜刺激症状、足裏や手のひらに湿疹や角化が発生する手脚症候群等がありますが、これらの症状は点滴静注での投与時に多く発生します。
さらに、フルオロウラシルは併用治療として活用されることが多くなっているため、他の薬剤による副作用にも注意が必要であり、例えばFOLFOX療法で使われているオキサリプラチンの副作用では、末梢神経障害が発生することがあります。
これらの副作用の症状は、治療の回数が多くなっていくにしたがって、だんだんと症状が強まっていくことがあることから、副作用からの回復のためには1回の治療ごとに1~3週間の休薬期間が設けられます。
その他、長期間にわたってフルオロウラシルを服用している方は、白質脳症の副作用が発生する場合があります。
白質脳症が発生することは稀ですが、初期症状として、舌のもつれ、歩行時のふらつき、手足のしびれ等の症状が発生しますので、そのような症状に気づいた場合は速やかに担当の医師に報告するようにしましょう。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤