フルダラビン(フルダラ)とは?効果・副作用は?
血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられるフルダラビン(フルダラ)
フルダラビン(フルダラ)とは、主に白血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる、プリン系抗悪性腫瘍剤です。
フルダラビン(フルダラ)は、内服によって投与されるフルダラ錠、点滴静注によって投与されるフルダラ静注用の2種類がバイエル薬品から販売されています。
フルダラビンは、世界中で慢性リンパ性白血病の治療に使用されている抗がん剤で、代謝拮抗剤に分類されています。
フルダラビンは、アメリカの国立がん研究所で1969年に合成に成功し、その後、ドイツの現在のバイエル・シエーリング・ファーマ社がこの研究を引き継ぎ、完成させました。
日本においては、2000年に発売されており、2007年にはフルダラビンの内服薬が低悪性度ホジキンリンパ腫の治療薬として承認されています。
フルダラビン(フルダラ)の効果・効能は?
フルダラビンは、人間のDNAを構成しているプリン塩基に似せる形で人工的に作られた薬であり、フルダラビンを投与すると、正常なプリン塩基と勘違いして体内に取り込まれてしまうため、がん細胞の分裂を阻害することができ、がん細胞の増殖を防ぐことができます。
また、フルダラビンはプロドラッグなので、投与後、体内で少しずつ有効成分へと変換されていきます。
そのため、治療効果が持続するので、より効果的にがん細胞に作用することが可能となっています。
フルダラビンの適応となるがんとしては、前述の通り、慢性リンパ性白血病や、再発もしくは難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)、マントル細胞リンパ腫等があり、点滴薬と経口薬のどちらでも使用可能となっています。
フルダラビンは、特に慢性リンパ性白血病においては、単剤投与されることが一般的となっており、その目的は病勢のコントロールとなっています。
これまで、再発・難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)には、CHOP療法(エンドキサン+アドリアシン+オンコビン+プレドニゾロン)が行われていました。
そして、その後はこのCHOP療法にリツキシマブを併用して治療する、R-CHOP療法が行われてきました。
フルダラビンは、このCHOP療法やR-CHOP療法で治療効果が得られにくかった低悪性度のB細胞性リンパ腫、中悪性度のマントル細胞リンパ腫に対しても治療効果があるとされています。
そのため、これらの治療法で効果が得られなかった症例や、治療後に再発した症例でフルダラビンが使用されるようになりましたが、一次治療に選択されるまでには至っていません。
また、フルダラビンの強い免疫抑制作用を利用して、急性骨髄性白血病等の造血幹細胞移植の前処置として使用されることもあり、この場合は点滴薬のみの適用となっており、アルキル化薬と併用する形で使用されます。
フルダラビンの代表的な副作用は?
フルダラビンの代表的な副作用としては、骨髄抑制とそれにともなう感染症となっていますが、重症化するケースは多くはないとされています。
ただし、他の抗がん剤を長期間にわたって使用していたというケースにおいては、白血球の減少が慢性化するというリスクがあります。
また、前述の通り、フルダラビンには強い免疫抑制作用があり、リンパ球に対して強い抑制効果を発揮します。そのため、リンパ球の減少による日和見感染にも注意が必要となります。
さらに、フルダラビンを慢性リンパ性白血病の治療に使用した場合においては、自己免疫性溶血性貧血が発生しやすくなりますので、急激な溶血が現れた際には、ステロイド治療を行うようになります。
また、フルダラビンの初回投与時には、腫瘍が急激に死滅するため、腫瘍崩壊症候群が発生する場合があります。
そのため、フルダラビンでの治療を開始する前に十分な輸液を行い、尿の出を良くしておくということが必要となります。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤