ペントスタチン(コホリン)とは?効果・副作用は?
多くのリンパ系の腫瘍に効果があるペントスタチン(コホリン)
ペントスタチン(コホリン)とは、フルダラビンやメルカプトプリンと同じプリン代謝拮抗剤に分類されている抗がん剤です。
ペントスタチンはアスペルギルス・二デュランスと呼ばれる細菌から合成される抗がん剤であり、1994年にヘアリーセル白血病の治療薬として承認されました。
ペントスタチンは多くのリンパ系の腫瘍に対して、治療効果の有効性が確認されていますが、特に前述のヘアリーセル白血病に対して、高い治療効果を発揮するとされています。
ペントスタチン(コホリン)の効果・効能は?
ペントスタチンは、酵素アデノシンデアミナーゼ(ADA)の働きを阻害するため、DNAの合成ができなくなり、抗腫瘍効果を発揮することができます。
ペントスタチンは前述の通り、ヘアリーセル白血病に対して高い治療効果を発揮しますが、実は奏効率においては、インターフェロンαでも高い奏効率を示します。
しかし、インターフェロンαでは、治療による完全寛解率が低いため、その多くの症例において再発が確認されています。
しかし、ペントスタチンによる治療では、インターフェロンαでの治療と比較して、治療による完全寛解率が高くなっており、その寛解の持続時間も長いとされています。
ペントスタチンを使用した際に発生する副作用の症状は?
ペントスタチンを使用した際に発生する副作用の症状としては、嘔吐、吐き気、食欲不振、腹痛等の消化器症状や、発熱、倦怠感等が代表的なものとなっています。
ペントスタチンの副作用として症状が重いものとしては、骨髄抑制による白血球の減少や、血小板減少等があります。
白血球が減少すると、身体の抵抗力が著しく落ちるため、感染症にかかりやすくなります。また、貧血等の症状も発生しやすくなるため、注意が必要です。
さらに、溶血性尿毒素症候群(HUS)等の重い腎障害や肝機能障害等の副作用が発生したという症例も報告されていますので、ペントスタチンによる治療中は慎重な経過観察を行うことが重要となります。
その他、検査等でわかるペントスタチンの副作用としては、クレアチニンクリアランス低下、クレアチニン・BUN上昇、心電図異常、タンパク尿、総ビリルビン・AL-P・LDH・ALT・ASTの上昇、白血球・血小板の減少、CRP上昇、腹水等があります。
そのため、ペントスタチンによる治療中は、定期検査を欠かさず受けるようにしましょう。
ペントスタチンの使用時の注意点は?
ペントスタチンの使用時の注意点としては、まず、抗ウイルス治療薬であるビダラビンとの併用治療を行っていけないということがあります。
ビダラビンの注射剤と併用すると、急性腎不全や肝不全等の重篤な副作用を引き起こす可能性がありますので、絶対に併用しないようにしましょう。
実際に、外国において、ペントスタチンとビダラビン注射薬(販売名:アラセナA)との併用治療を行って、腎不全、肝不全、神経毒性等の重い副作用が発生したという症例も報告されています。
また、ペントスタチンは、アルキル化剤であるイホスファミドやシクロホスファミドと併用治療を行って、心臓に対する毒性によって患者が死亡したという症例も報告されています。
そのため、イホスファミドやシクロホスファミドとペントスタチンの併用治療も行えません。
さらに、ペントスタチンと同じ代謝拮抗剤であるフルダラビンとの併用治療においても、致命的な肺への毒性を引き起こしてしまうというおそれがあるため、ペントスタチンとの併用治療に用いることはできなくなっています。
その他、ペントスタチンを使用している際には、腎機能検査、血液検査、肝機能検査を適宜、受ける必要があります。特に腎機能障害の持病を持っている方は、これらの検査を高い頻度で受けるようにしましょう。
最後に、ペントスタチンは胎児に対する毒性や、催奇形性があることが報告されています。
そのため、妊婦さんや妊娠の可能性がある方はペントスタチンを使用することができませんので、注意しましょう。
【まとめ一覧】代謝拮抗剤
■メトトレキサート(メソトレキセート)
>>急性および慢性白血病等に使用される代謝拮抗剤
■メルカプトプリン(ロイケリン)
>>急急性リンパ性白血病の寛解後に使われる代謝拮抗剤
■ペメトレキセド(アリムタ)
>>分子構造のよく似た葉酸の代謝を阻害することで細胞に損害を与える葉酸代謝拮抗剤
■ペントスタチン(コホリン)
>>多くのリンパ系の腫瘍に効果がある代謝拮抗剤
■フルダラビン(フルダラ)
>>多く血病やリンパ腫等の血液腫瘍の治療に用いられる代謝拮抗剤
■フルオロウラシル(5-FU、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナボン)
>>多主に大腸がんの化学療法において中心的な役割を果たす抗がん剤
■ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)
>>白血病やメラノーマの治療に使用されてきた抗がん剤
■ネララビン(アラノンジー)
>>再発または難治性のT細胞急性リンパ性白血病に使用されてきた抗がん剤
■ドキシフルリジン(フルツロン)
>>日本では、胃がん、結腸・直腸がん、乳がんの治療薬として1987年に承認された抗がん剤
■テガフール・ウラシル(ユーエフティ)
>>頭頸部がんや消化器系のがんに広く使用されている抗がん剤
■テガフール(アチロン、アフトフール、テフシール、フトラフール、ルナシン)
>>代謝拮抗剤に分類されるフルオロウラシル系の抗がん剤
■シタラビンオクホスファート(スタラシド)
>>骨髄性異形成症候群や急性骨髄性白血病に対する治療に適した抗がん剤
■シタラビン(キロサイド)
>>代謝拮抗薬の中でもピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤
■クラドリビン(ロイスタチン)
>>リンパ系腫瘍に治療効果のある抗がん剤
■カルモフール(ミフロール)
>>大腸がん、胃がん、乳がんに対する有効性がある代謝拮抗薬
■エノシタビン(サンラビン)
>>急性白血病の治療に使用される代謝拮抗薬
■ゲムシタビン(ジェムザール)
>>がん細胞を自死(アポトーシス)に導く抗がん剤
■テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)
>>胃がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵がん、胆道がんと幅広いがんに対して適応となっている薬剤