
「良性軟部腫瘍」、「悪性軟部腫瘍」、「軟部腫瘍類似疾患」に分類されます
人間の身体を構成する組織の中で、血管組織、滑膜、筋組織、脂肪組織、繊維組織等、骨や歯や内臓等の組織を除いたものを「軟部組織」といいます。そこに発生する腫瘍を「軟部腫瘍」といい、「良性軟部腫瘍」、「悪性軟部腫瘍」、「軟部腫瘍類似疾患」に分類されます。
「良性軟部腫瘍」は発生した場所では大きくなるのですが、他の臓器等への転移はありません。
「悪性軟部腫瘍」は「良性軟部腫瘍」のように発生した場所で大きくなるだけではなく、骨、リンパ節、肺等に転移する可能性がある腫瘍となっています。
「軟部腫瘍類似疾患」は腫瘍の性質があるものの、真の腫瘍とはいえないものの総称です。
「良性軟部腫瘍」の代表的な腫瘍としては、「脂肪腫」があります。「
脂肪腫」は多くの場合、皮下に境界のはっきりした、やわらかい腫瘍としてあらわれ、痛みはなく、稀に筋肉内に発生することもあります。
多数発生するケースと1つだけ単独で発生するケースがありますが、とくに治療は必要ありません。
他の代表例としては、「ガングリオン」があり、これは手関節や手指、膝のうしろ等に、小さなかたい腫瘤が発生します。
これは、骨の腫瘍と間違われるほどかたいもので、時に鈍い痛みを伴います。
腫瘤には透明なゼリー状のものがつまっているので、それを吸引すれば、腫瘤は消えますが、再発することもあります。
ただ、良性腫瘍であるので、再発しても心配はありません。
「悪性軟部腫瘍」の発症率は10万人にあたり約2人程度
この数字だけ聞くと、その発症頻度はとても低く感じられますが、「悪性骨腫瘍」と比較すると、約2.5倍の発症率となっています。
その代表的な例としては「悪性繊維性組織球種」があります。
これは悪性腫瘍細胞が丸い形をした組織球性の細胞と、紡錘型の形をした線維性の細胞で構成されており、「悪性軟部腫瘍」の中では最も多く発生しています。
女性より男性に多く発生する傾向があり、年齢でみると、50~70歳代の中・高年の年齢層の方に多く発生しています。
発生しやすい部位は、骨盤と、脛骨、上腕骨、大腿骨等の長管骨となっています。
「悪性繊維性組織球種」の初期症状は?
「悪性繊維性組織球種」の初期症状としては、まず痛みがあらわれ、稀に病的骨折(腫瘍のために骨が脆くなって起きる骨折)による急激な痛みによって、腫瘍が発見されるというケースもあります。
「悪性繊維性組織球種」の治療としては、多くの場合、手術のみで治療が可能であり、腫瘍が巨大でなければ、腫瘍とその付近を含めて切除し、その後、再建手術が行なわれるのが一般的なようです。
腫瘍の切除が不可能な場合には、脚や腕の切断手術が行われ、非常に悪性度が高い場合には、転移を防ぐために、補助化学療法が行なわれます。
「悪性繊維性組織球種」の5年生存率は約48%となっており、転移がないケースでは約55%となっています(日本整形外科学会データより)。
「脂肪肉腫」とは?
「脂肪肉腫」は、「悪性軟部腫瘍」の中では「悪性繊維性組織球種」に次いで、多く発生しており、発生している年齢は「悪性繊維性組織球種」とほぼ同様となっています。
発生しやすい部位は、後腹膜膣、大腿や上腕に発生しやすいですが、そのタイプは様々で、悪性度が高いものから低いものまで、多種多様となっています。
その中で、最も発症頻度が高いものは「分化型脂肪肉腫」ですが、その症状が良性腫瘍である「脂肪腫」と似ているため、良性と勘違いされる可能性があるので、専門の医療機関での受診がおすすめです。
「横紋筋肉腫」は小児(5歳くらいまで)の軟部肉腫の中では、最も発症頻度が高くなっています。
「悪性軟部腫瘍」の中で3番目に発症例が多いとされているのが「横紋筋肉腫」で、小児(5歳くらいまで)の軟部肉腫の中では、最も発症頻度が高くなっています。
以前は、病気の進行が非常に速いことから、悪性度が高く、極めて予後が悪い病気とされてきましたが、近年では有効な放射線療法や化学療法が開発されたため、手術と組み合わせての治療を行うことによって、予後がかなり改善されてきています。
ただし、高齢者や成人に発生した「横紋筋肉腫」には、小児での発症例と比較すると、放射線療法や化学療法での治療効果が劣るという特徴もあります。
「軟部腫瘍」では、しこりがよくみられる症状ですが、小さいうちははっきりとはわからず、さらに痛みを伴わない。
ことも多いため、自覚症状がないことから、腫瘍が比較的大きくなってから医療機関を受診するケースが多くなっています。
ただ、急速に腫瘍が増大していく、腫瘍が5cm以上の大きさになる等の症状が出た場合は、悪性の可能性が高くなってくるので、早期に医療機関を受診することが大切です。